案内してくれるよね、と笑顔で告げた不二に、その顔を向けられたわけではなかったが、桃城と越前は顔を青くした。
−After Story−
−慣れない生活−
「あ、プロと竜崎先生」
「わかっ」
「これ、だれ?」
「ー、これだれ?」
見せられた写真には、少し若いスミレと青学のジャージを着た少年が二人映っていた。
「徹は、奏一の幼馴染です」
「テニスやってんの?」
「徹は、高校でやめました」
「ふーん」
越前が問うとが答えた。越前の視線にはまた次の写真が映っていた。徹が大切そうにを後ろから抱きしめている。
「蓮彌惺と静流の兄ですよ」
「え!」
「まじか!」
「え、だれ?」
「あれだよ、あれ。MIRAGEの」
「ああ」
これを平凡な日常というなんだろうな、とは騒ぐ中学生たちを見て思った。そこに、ねえ、と声をかけられ、その声の主を見た。
「なんですか、越前君」
「これ、ちょうだいよ」
「は?」
越前が手にしていたのは、年不相応に大人っぽい少女がはにかんでいる写真。写真集の一ページにありそうなそれは、カメラを全く意識していないものだ。
「ちょうだい」
「写真を、ですか?」
「うん」
他にないでしょ、と呆れたような越前の視線を受け、は困惑したようにその視線を返した。
「何故・・・」
「かわいいから」
きっぱりと即答され、僅かには自身の血流が良くなるのを感じた。
身内ではない人間から、ストレートに好意を受けることなど滅多にない。どうするべきなのか分らなかった。
「僕も欲しいな」
「不二さん」
困っているを楽しそうに不二は見た。こっちのほうが対処しやすい、とは思った。からかい交じりの視線はわかりやすい、と。だが、それが不二の本心であることなど、は気付いていない。
「からかわないでください」
「いやだなあ、本当に欲しいと思ってるよ」
にこにことする不二に、は呆れたように見た。
「ねえ」
自身から視線が外れたことにむっとしたように、越前が呼んだ。
「そんなもの、貰ってもしょうがないでしょう」
「欲しい」
いつの間にか複数の視線を感じ、はそちらへ視線を向けた。苦笑いを浮かべた大石と河村。にやにやしている乾と菊丸と桃城。顔をしかめている海堂。助けをだす人間はいない。
「そのアルバムは、もともと奏一さんのものですから」
「・・・ちぇ」
唇を尖らせた越前に、は眉を下げた。
「今度コピーさせて」
どんだけ欲しいんだ、とチームメイトたちは呆れたように越前を見た。
「おかわり」
空になったグラスを渡されたは、はい、と素直にキッチンへとそれを持っていった。
UP 06/01/14