−ETC−

−FUNNY ENCOUNTER−






菊池朱己は、椎名桜子によって使いに出されていた。

「普通、夜にいきなり此処に行けって言うかなぁ・・・」

眉を下げて呟く俺の手の中には、一枚のメモ紙と茶封筒。
メモ紙には、簡単な地図と住所、そして、『LUNAR ASYLUM』の文字。
店か何かの名前か?と菊地が考えていると、視界に藍の看板が見えた。

「此処・・・?」

目的地はどうやらバーのようだ。
小さな階段を下りて、不思議な空気を漂わせるドアを開けた。
バーは、落ち着いた雰囲気でなんだか他の店とは違うように感じた。
そして、先生の言葉を思い出す。


『は?』
『だから、この店に行ってコレを届けて頂戴。私は用事があるの。』
『今からですか・・・?』
『そうよ。あと、店に入ったら、綺麗な女の人を探しなさい。それと、嫌に綺麗で落ち着いてる男もね。』
『先生・・・それだけじゃ見つからないですよ。』
『わかってるわよ。貴方じゃ絶対見つからないだろうから、向こうにも連絡してあるわ。』
『(絶対って・・・)』
『ちなみに男の方は、その店のマスターだからね。』


少し緊張しながら俺は、キョロキョロと周りを見渡す。そして、バーカウンターに髪が長く蒼い女の人を見つけた。その向かいには、優しい微笑みを浮かべたバーテンダー。

あの人かな?と俺は、歩き出した。

「あの・・・」
「・・・?」
「何かお飲みになりますか?・・・・・・君は、桜子ちゃんの?」

俺が声を掛けると、女の人は目線だけを向けて、男の人はマスターとしての台詞を言うと、俺が誰だかわかったらしい。本当に綺麗な顔だな、2人とも。

「は、はい。え、と、コレを先生から預かってきました。」
「あぁ、ありがとう。」
「それじゃぁ、俺は、コレで・・・」
「え?桜子ちゃんから聞いてない?」
「な、何をですか・・・?」

また、先生が何か言ったのか?と身構えると、男の人は、桜子ちゃんらしいな、と笑った。

「俺は、蓮彌はすや徹。桜子ちゃんとは、結構前からの知り合いなんだ。」
「徹。」

自己紹介をする蓮彌さんに女の人は、私帰るから、と言った。
近くで見てもすごく美人だ、この人。
先生も綺麗だけど、この人は、別の綺麗だと思う。
でも、さっきも今も殆ど無表情で、なんか手塚みたいだ・・・

「まぁ、待てって、。桜子ちゃんが折角可愛い愛弟子を寄越してくれたんだから、聞かないか?」
「は?」
「え゛・・・」

何の事?とさんが(さっきの女の人の名前らしい)蓮彌さんに聞くと、俺の背中を冷や汗が伝う。いつ先生の可愛い愛弟子になったんだ・・・?

のバイオリンと菊池君かれのピアノ。」
「「え・・・?」」

俺は、思わず口を開けて呆けた。
さんも同じだったらしい、眉間に小さく皺を寄せて聞き返した。

は、彼を知ってるだろ?The Tempest。」
「Tempest・・・えぇ。」
「菊池君。彼女、っていうんだけど、バイオリンを弾くんだ。」
「そうなんですか?」

楽器を弾くといわれて、少し緊張が解けた俺は、さんを見た。さんは、何でか(少しだけど)驚いた顔をした。

「え、まぁ・・・少しなら。」
「好きな作曲家とか居ますか?」

音楽の事になるとやっぱり共通の話題がありそうで嬉しくて俺は質問した。そして、困惑した顔のさんを見て、蓮彌さんは苦笑しながら頼んだ。

「そこで今日は、ちょっとした記念日なんで、2人に合奏して欲しいんだ。」
「え。」
「ちょっと、徹・・・」
「・・・それって、先生もそう書いてあるんですか?」
「ははは。結構、桜子ちゃんに遊ばれてるみたいだね。慣れてる?」
「え、ぃえっ・・・」
「前から変わってないみたいだしね。」
「ちょっと、徹・・・」
「あぁ、じゃあ弾いてくれるかな?」
「え、と・・・でも、俺とちったり・・・・・・」
「まさか、それはないだろう。君も天才だって言われてるしね。」
「ぇえっ?!てっ、天才って・・・!?か、買いかぶり過ぎですよ」

この時、わたわた慌てる俺を見たさんが、男なのにこの人可愛いな、と思った事を俺は知らない。

「じゃっ、じゃあ・・・弾かせていただきます・・・」

でないと先生が後で怖いし。そして、その返事にさんは、驚きの声をあげた。

「えっ!?」
「本当?それは、良かった。じゃあ、あそこにバイオリン置いてあるから。」

蓮彌さんが指差した場所には、ピアノと他にも楽器が置いてあった。はあ、と息を吐き、さんは小さな低いステージへ向かった。それを追いかけるように俺は、ギクシャクとステージへの小さな階段を歩いた。

「え、と。あの。さん・・・」
「何か?」
「何、弾きますか?」
「私は、何でも構いませんが?」

いきなりでも、なんでもいいなんてすごいなあ、この人。そこで俺は、この間越前のリクエストで弾いた(弾かされた)曲を言った。
そして、さんの穏やかな音に俺は、驚いた。絶対音感のような物を持ってる俺でさえ全く外れてない音をバイオリンでなんか絶対弾けない(俺が弾くのはピアノだけど)。

演奏が終わるとさんは目を開けて客にお辞儀をした。それに倣って俺も頭を下げる。そして、バーに居た人達は拍手をしてくれた。

でも、其処で(越前に言わせれば)普段の俺に戻ったせいで、さっきは気を付けた小さなステージからの5段しかない階段からこけた。

恥ずかしさで俺の顔は熱くなっていった。驚きでぽかんとしたさんが俺を見て聞いた。

「大丈夫ですか・・・?」

恥ずかしすぎる・・・!!!
こくこくと頷くとくすりと笑う声がした。

その声に反応して俺が顔を上げるとさっきまで驚きと無表情しかなかったさんの顔が優しく微笑んでいた。とびきり綺麗な顔で、時々不二が見せる綺麗なんだけどなんか怖い笑顔とは違った。


その後、俺とちゃんは、(名前で呼ばせてもらうことにした)色々な話をした。音楽についてとか自分達のこととか。
驚いた事にちゃんは、1つ年下だった。(こんなに大人っぽいのに・・・!)

っていうか、バーに来ていいのか・・・って、俺も演奏だけに行くけど。
それでも、きっと殆どは俺が話していたんだろう。
ちゃんは、大体相槌とか返事をするだけだったしな。

そして、家に帰ると、先生は既に用事から帰ってきていた。
俺の姿を見ると、すぐに帰ってきたの?と言ってお休みと部屋に入っていった。
待ってたのかな?と思ったこと自体が馬鹿だった。

「何?お酒飲まなかったのね。つまらないわ。」

本当につまらなそうに言うから怒るを通り越して呆れてしまった。
そこでベッドにもぐってもう一度思った。
本当に綺麗な人(子って言うのはなんか間違ってる気がする)だったなあ。
また、会えるかな・・・?


二日後、俺は学校で驚きの再会をする事になった。

「菊池さん・・・?!」   「ちゃん?!」





★FIN★

『CUBEXX』のかなこ様 の 青学主人公、菊池 朱己君を許可を頂いてお借りしました。
素敵な男主人公の夢をかかれる かなこさんのサイト『CUBEXX』が 一周年記念ということでキャラをお借りして書いてみたのですが。
ネタは、友人の会話から。(笑)
ウチのBLUE GENIUS主人公と絡ませてみました。

かなこさん、一周年おめでとうございます。
それと、私なんぞに朱己君をお貸しして下さって有難うございます!(お辞儀)

*注意*
この話は、本編/番外編とも全く関係ありません。


*かなこさんの素敵なサイト、『CUBEXX』へは、『BACK GATE』よりお願いします。



UP 03/07/04