−SIDE STORY−
−BEAUTIFUL COUSIN−
「どうした?」
小さな大会で優勝して帰って来たばかりで、少し強引に自分の母校に転入させた従妹を見て問う。少し機嫌が悪い。やっぱ少し強引過ぎたか・・・電話だと返事をしてくれたんだけどな。
「何も」
綺麗な瞳は普段隠されている色を見せていて。
綺麗な長い髪は少し動くだけでサラサラと滑る。
「楽しいか?」
「何が?」
「青学」
普通の中学生は絶対に読まない、否、読めない本から眼を俺に向ける。でも一瞬でその眼は本に戻って困ったように眉間に皺を寄せる。素っ気無く、別に、と返ってくる返事に、俺は笑みを浮かべた。
「何笑ってるの・・・?」
「いや、何でもない」
「嘘吐き」
「嘘吐きって・・・」
口を尖らせて拗ねたように言うかわいい姿。きっとソレを言ったら更に拗ねるだろう。慣れない人間や自分を嫌う人間には絶対に見せない姿。殆どの人間が知らないを俺は知っている。
本当は寂しがり屋だという事。
本当は照れ屋だという事。
本当は意地っ張りだという事。
本当は好きな人が沢山居るという事。
本当は認めてほしいんだという事。
「奏一。何が食べたい?」
「ん?」
「折角帰ってきたんだし作ってあげる」
「良かった。上手い飯食いたかったんだ」
「・・・お世辞言っても何も出ませーん」
パタンと本を閉じてキッチンに向かう後姿を見て、新婚みたいだな、なんてくだらない事を思う。別にそんな関係ではないのに。
「どうしたの?」
何も返さなかった俺にキッチンからは顔を覗かせて問うた。
「いや、新婚ってこんなんかなーって思った」
「・・・馬鹿?」
「ひでーな。っていうか、そんな哀れな眼で見るなよ・・・」
にとって、俺はそんな対象じゃない。
「じゃぁ何?テレビでよく出るお決まりな台詞でも言うべき?」
「・・・お決まりな台詞?」
「アナタ、ご飯にする?お風呂にする?それとも、私?」
「一体どんなテレビを見てるんだお前」
棒読みで言われた言葉に苦笑した。
そして、俺が次に言う言葉に綺麗な彼女の可愛い顔を想像して笑みを浮かべた。
「もちろん、お前だよ」
◆FIN◆
元・CLAP。
奏一が異様に人気だったので。
UP 09/24/04