竜崎先生の薦めでマネージャー兼コーチがテニス部に入る事になったんだ。
とても印象的な人で1度会ったら絶対に忘れないと思うような人だった。
−SIDE STORY−
−IMPRESSION−
−ver. 加藤 勝郎−
先輩は綺麗な長い髪で転校初日から噂になってたんだ。堀尾君やカツオ君も噂を耳にして、会ってみたいね、って言ってたんだけど。リョ−マ君は初めて僕達から話を聞いたみたいで、へー、って一言だけだった。だけど、流石に3年生の教室に僕達1年が見に行けるわけがなくて。目立つ容姿だって話だから、いくら青学が広くても一回くらいは見かけるかなって思ったんだ。
だけど僕がその人を見たのは『見かける』なんて程度じゃなくて。部活で『マネージャーと部員』って『見かける』なんて物じゃなくなった。
それに初めて見かけるわけでもなかったんだ。
先輩は、確か前に部活に来た事があったんだよね。荒井先輩が殴り掛かっちゃって少し恐かった時。あの時の印象どおり、とても無口な人だった。
だけど、僕は知ってる。先輩は冷たい人じゃないことを。
「わっ!」
「っ・・・」
「ご、ごめんなさい!」
「・・・・・・」
ぶつかった僕が謝ると少し綺麗な顔を歪めて先輩は何も言わずに歩いていった。
「大丈夫?カチロー君」
「う、うん・・・」
「ったく!何様のつもりなんだよ、あの人!ぶつかったって、ちゃんと謝ったのに!」
「無視してたもんね・・・」
「ってか、カチローもすぐに謝るなよ!先輩がぶつかってきたんだろう!?」
「あ、いや、多分、ぶつかったのは僕の方だし」
「それにしたってよぉ!」
怒る堀尾君を宥めるカツオ君を見て、僕は足元を見た。其処には小さな黄色いボールが落ちてた。あのまま僕が球拾いをしようとして屈んだまま後ろに下がっていたら。僕は転んでたんだ。
あの人は僕を助ける為にわざとぶつかったんだ。本当か、なんてわからないけど。怒る堀尾君を横に、僕は少し嬉しかった。あの人は、皆が思っているような人じゃないのかもしれない。
そのまま急いでフェンスの傍まで駆けた。
「先輩!」
呼んでも振り返らなかったけど、僕はお礼を言った。
「ありがとうございました!」
少しだけ振り返って僕を見た先輩は驚いた様に眼を見開いた。そして、眼を細めて、優しい顔に見えた。
皆が思っているような人じゃないんだ。その事を発見した僕は、とても嬉しかった。
そして、部の誰よりもテニスが上手かもしれない先輩に、僕は今度アドバイスを聞こうと思った。
◆FIN◆
元・CLAP。
何を考えていたのかカチロー夢(?)
UP 09/24/04