−SIDE STORY−
−IMPRESSION−
−ver. 海堂 薫−
ついこの間テニス部にマネージャーが入ってきた。いや、実質的にはコーチだ。
皆の目を引く外見だった。本来ならば校則違反であろう青い髪と耳に飾られたピアス。美人なのにあまり笑わなかった。そして、素っ気無い態度であまり人と馴れ合わない奴だった。そのせいで何人もアイツを嫌っているようにさえ思えた。
だがの実力は本物だ。
アイツの入部を賭けた試合の相手をした俺はわかってる。本当ならアイツはエースとリターンエースで勝てたはずだ。
まるで子供と大人の実力の差。下手したらは手塚部長よりも強い可能性がある。それなのにアイツは俺とラリーに持ち込んだ。余裕ぶっているようで気にいらねぇ。
今はの実力のほうがかなり上だ。だが俺は俺のやり方で強くなる。この先ずっと俺が負けるというわけではない。
それだけじゃない、はコーチとしても充分だ。的確に一人一人の悪い癖等を見破る。そして、ソレを改善するアドバイスも的確だ。
「海堂さん、動きが鈍いですよ」
「ああ?」
「練習量の調整をしたほうがいいでしょう。ランニングも適度な物でなければ逆効果です」
確かに前日に俺は普段より多めに走っていた。誰も気付かなかった事には気付いた。その事は更にアイツとの差を見せ付けられるようで苛立った。まるで嫌味のように聞こえる言い方。睨んでも何もなかったかのように涼しい顔で俺の横を通り過ぎた。
初めて会った時と同じ。
何も見せない瞳。
コートに入ってきて荒井が掴み掛かった時。アイツは特に大きな反応を返さなかった。癪に障るくらい動揺を見せない瞳で見られる。
落ち着いた声音。
菊丸先輩達が話し掛けた時。初対面では絶対言わないような刺のある言葉を使った。静かな綺麗な声で刺を含む言葉を告げられる。
拒絶する雰囲気。
菊丸先輩達が質問した時。何も言わずにただ冷たい雰囲気を出した。誰も近づくなと静かに示される。
『』は一体何者なのか。
俺は知らない。興味もない。
ただ俺が目指すのはいつかアイツを俺の実力で負かす事。
いつかあの冷たい眼が悔しがる事を。
いつかあの無表情な顔が悔しさで歪む事。
いつか、あの強い実力者に認めてもらう事。
そして、いつか全ての頂点に立つ事。
◇FIN◇
元CLAP。
認めてるという事を本編であんまりかけないので。
UP 09/03/05