−PAST−

−WONDERFUL GIRL−



初めて彼女に会ったのは奏一を通してだった。
年下なのにそう思わせない強い瞳。
けれどその瞳は本当は強く見せているだけだった。

「こんにちは」
「こいつ、俺の同級生で蓮彌徹っていうんだ」
「よろしく」

奏一が微笑んで、俺の腐れ縁の親友だ、と伝えるとの眼は少し警戒を解いた。

「こんにちは・・・」

それからはよく話すようになって、ちいさな微笑みを見るようになった。
けれど少し触れそうになるとの目は恐怖で溢れた。
の過去を俺は奏一から聞いたわけじゃない。だから、彼女が何を怯えるのか知らなかった。


けれど、ある日気付いた。

彼女の恐怖を。

彼女の不安を。


自分を傷つけても人を守ろうとする彼女。
嫌われてでも人を守ろうとする彼女。


「徹さん・・・・・・?」
「奏一たちは一緒じゃないのか?」
「い、いいえ・・・・・・」
「そう。じゃあ、一緒にお茶でもするか?」
「え、でも・・・お友達が・・・」

俺の後ろに立っていた女達を不安そうに見てから、俺を見た。

「ああ、彼女達なら心配ないよ」
「え・・・」
「それじゃ、俺、この子と遊びに行くから」
「ええー!蓮彌君つめたーい!」
「そうよー!私達と出掛けましょうよー!」

彼女たちの不満そうな声に反応した。けれど、俺はその声を無視し、そっとの肩に手を置いて、いこう、と言った。

は、自分に優しくする人間を大切にしたがっている。だから自分に向けられた嫌悪をその人間に向けられないように、人を避ける。

「あの、徹さん・・・」
「ん?」
「良かったんですか・・・?」

不安そうな瞳。困った表情。

「構わないよ。彼女たちと出掛ける気もなかったしな」

だから平気、と伝えればホッとしたように不安そうな表情が消える。

「それよりも」
「?」
「そろそろ俺の事呼び捨てにしてくれてもいいんじゃないかな?
「え?」
「俺も奏一と似たタイプだからね。他人の言う事は気にしない」
「・・・・・・」
「自分が好きなら、他人が自分の事を何て言おうとその人と居る」

そーゆーこと、と最後に笑顔を見せた。
そしては驚いた顔から、俺に初めて今までないくらい眩しい笑顔を見せた。

「ありがとう!徹!」





ふ、と笑みをこぼした。
その時、向かいに座っていた人間の事をすっかり忘れていた。

「兄貴?」
「ん?あ、ああ・・・悪い、何か言ったか?」
「その1人で笑うの止めたほうがいいよ・・・不気味」
「失礼な奴だな。実の兄に向かって」
「でも惺の言う通りだよ、兄さん」
「静琉まで・・・」
「あれ、兄さんそれ・・・」

静琉の指した物は俺が今まで見ていたものだった。それ●●を見ると惺は、あ、と嬉しそうな声をあげた。

俺が今まで見ていたそれ●●は―――

   「幸せ」を映した写真。

楽しそうに笑う若い2人の親友と男女の双子。

そして、その双子をずぶ濡れにした少年の隣で幸せそうに笑う少女。



◆FIN◆

元CLAP。

好評な蓮彌兄弟。

UP 11/05/04