守る者
転校早々、同じクラスの奴が喧嘩しているところに遭遇した。
黒崎一護と名乗ったそいつは、俺と同じ経験をしているのだと知った。
「あっ!一護、なにその傷!」
「げッ、!」
表の通りに出ると、一護と同じオレンジの髪をした女の子が叫んだ。それを見た途端に一護の顔が歪んだ。
「かっこわるっ!まさか負けたとかじゃないでしょーね!」
普通なら『喧嘩はダメだ』とか『危ない』と注意すると思ったんだが・・・
どうやら彼女は違うらしい。
「負けるわけねーだろ!あいつらが石とか使ってこなきゃこんな風になってねーよ!」
反論するように一護が言うと、彼女はついさっきまでの態度と打って変わり、あっそ、とあっさりと返した。ならいいや、と続けるとかばんからハンカチを取り出して、一護の額についたままだった血を拭いた。
痛そうに顔を歪めた一護の顔がキレイになると、よし、と呟いて俺の目の前に立った。
「背たっかいねー!」
いいなぁ、と笑った相手に驚く。
「お前がこんなでかかったら、こえーよ。」
隣から入ったつっこみに俺も思わず頷きそうになったが、目の前の人物は俺との身長の差を測ろうとしているのか自身の頭の上に手を当て、まっすぐ横に動かすと、俺の胸よりも下に当たった。
「ちゃど、くん?ちゃわたり、くん?」
「ああ、こいつ、チャドっつーんだ。」
「・・・茶渡だ。茶渡泰虎。」
違うといっていた名前を言われて一応直してみた。
「私は黒崎。よろしくね、チャド。」
どうやら、俺の名前は完全にチャドとしてインプットされたらしい。
「ね、チャド、うちの学校だよね?クラスは?」
「俺らと同じ。」
「えっ!タメ?!」
わお、と目を丸くして驚いた顔をした相手に俺はふと気づく。
「黒崎・・・?」
「うん。」
クラスメイトの名前は『黒崎一護』。目の前の人物の名前は『黒崎』。
二人ともオレンジ色の髪・・・
「双子なんだ、チャド。」
笑った黒崎に、そうか、と返すと、だからね、と続けた。
「って名前で呼んでね。」
「あ、ああ・・・」
にっこりと笑ったその顔が、とてもかわいいと思った。
「さすがに見た目は違うから間違えられねぇけど。苗字ばっかりは一緒だからな。いつもめんどくせーんだよ。」
めんどくさそうに言った一護の言葉に、そうか、と相槌を打つと、は、よし、と手をたたいた。
「じゃ、学校行こう!」
俺と一護の間に立つと俺達の腕に飛びついたは、腕を組んだまま歩き出した。小さな歩幅にあわせるように進み始めながら、一護を見ると、ひっぱるな、と文句を言いながらも嬉しそうに笑っていた。そして、俺はある予感がした。
俺はこの二人のために拳を振るう。
この二人を守るために。
UP 07・26・08