そして うごきだす
「一護・・・!?」
複数の霊圧が気になったが目にしたものは、地面に倒れた石田雨竜と黒崎一護の体だった。
雨竜の怪我はそれほどでもないものだと一瞬のうちに判断したはすぐに一護へ駆け寄った。
「一護!」
「さん・・・!」
は駆け寄った一護の隣に片膝をついて息を確認する。ホッと息を吐くと驚いたような声で名前を呼ばれ、そちらに顔を向けた。
「ルキアちゃん。」
さっきまで泣いていたのか、目がわずかに赤いルキアがその目を大きく見開いていた。そして、その隣にはは初めて見る阿散井恋次と朽木白哉が立っている。なぜ、と震えるルキアの唇が呟いた。驚くのも無理はない。本来ならば普通の人間に死神化した一護の姿は見えないはずなのだ。それでもは迷いなく、死覇装を着た一護に駆け寄った。そのことに恋次も驚いたように目を丸くしている。
「一護。」
そっと一護の肩へ手を伸ばそうとした瞬間――
「・・・危なっ。」
はそばにあった一護の斬魄刀のかけらを手にして白哉のそれをふせいだ。
「そりゃあないんじゃない?死神さん。」
白哉が刀を戻すと一護の斬魄刀が二つに割れた。
恋次は自身の目を疑った。一瞬のうちに抜刀された白哉の斬魄刀の一瞬を見ることができなかった。追うことができたのは刀が抜かれてから。自分がそばにあった斬魄刀を掴んで防御に使うことができたかと問われれば、おそらく無理だろう。人間がこんなことができるなんて思えなかった。
ルキアも目の前のことに驚いた。幼馴染だ、と一護に紹介された少女は、霊感が強いと告げられた。しかし、だからといってこのような戦闘能力があるとも思えないような少女で。自身が学校というものに通いながら知った彼女は本当に普通だった。運動能力も人並みだと思った。よくこけているところを見かけても居る。だが、目の前に居る彼女からはその雰囲気はまったくない。
「丸腰の人間相手にそんな物騒なもの向けるなんて。」
苦笑しながら割れた斬魄刀を離したは『お手上げ』のポーズをとるように両手を顔の高さまであげた。
「帰る最中だったんでしょう?さっさとお帰りなさいな。」
まっすぐ見つめる相手を見ながら白哉斬魄刀を鞘へ収めた。
「それをどうするつもりだ、人間の娘?」
は口角を上げて答えた。
「止めを刺さずに去るんだ。これをどうしようと私の勝手だろう。」
微笑みを浮かべているようで目は笑っていないに、ルキアは震えた。
恋次もまたその威圧感に肩を揺らした。今まで感じたことのない霊圧ではない、威圧感に。
「さっさとお帰りなさいな、死神さん。」
威圧感を消して、にっこりと微笑んだを見た後、白哉は目を閉じた。行くぞ、と一言言うと恋次はハッとしたように踵を返す。
「ルキアちゃん。」
一歩歩き出したルキアをが呼んだ。さっきよりも柔らかい笑みを浮かべたまま。
「またね。」
え、と立ち止まろうとする前に尸魂界と現世をつなぐ扉が閉じた。
UP 07/26/08