アクマを追った先で見た光景に、神田は舌打ちした。
細長く逆三角形の身体から六つの銃口がつき出ているレベル2の目の前に、一人の少女が地面に座っていた。
なんでこんなとこに女が、と舌打ちをした。
「あ、あ・・・」
「ニンゲンミーッケ!」
にやあっとアクマの顔が笑った。大きく見開いた少女の目は呆然と
「い、やあああああああああ!!!!!」
刀を構えたところで響いた叫び声と同時に、まばゆい光と爆発音が響いた。
どうしようもない
この世界で
「というわけで、二人で行ってきてね」
にっこりと笑って言ったコムイに、神田は、ふん、と鼻を鳴らすと部屋を出るために踵を返した。それをみて、おや、とコムイは思った。
「珍しいねえ、神田君が文句を言わないなんて」
とはいえ彼女を見つけたのは神田君だから気になるのかね、と心の中で付け足した。ふと目を伏せているを見て、コムイは胸の奥に感じた痛みに気付かないふりをした。
「初任務。神田君が一緒だし。大丈夫だよ」
がちらりと視線をあげ、コムイを捉えた。その冷たい視線を向けられた途端に、無責任な言葉、と声が聞こえた気がして、息を飲んだ。
「失礼します」
そういうとは踵を返して、部屋を出て行った。
汽車に乗ると隣のボックスの席に座っているにちらりと視線をやった。は静かに窓の外を見ていた。まっすぐ背すじを伸ばして、姿勢よく座っている。悲しみを感じているようにも、恐怖を感じているようにも見えなかった。訓練を受けた人間でも、初任務のときは緊張するものだというのに。
「さんはベルギーは行ったことがありますか?」
「いえ」
ゆっくりとした動作で窓の外から視線が移動した。静かに答えた声に震えはない。
「綺麗な街がたくさんありますよ」
「そうですか」
「今回の奇怪な事象は――」
説明するファインダーの話をしっかりとは聞いているように見えた。気に入らない、と神田は思った。
『こんな世界、どうでもいい』
はっきりとそう言いながら、教団に入ることを了承し、今ではファインダーの話を聞いている。
だが、その姿は決して意気込んでいるわけではない。まるで第三者が物語を聞いているようだ。
「そんなこと、あるんですか」
「イノセンスがそういう事象を起こすこともあるので、我々はそれを調べにいくんです」
「なるほど」
まるで存在しているのに、存在していないようだ、と神田は奇妙な感覚を覚えた。舌打ちしたい気持ちを押さえて、眠ることにした。
「もうすぐですね」
ファインダーがそういうとは、外へ視線を動かした。
駅に着くと、ゆったりと周りを見回した。
「おい」
神田が呼ぶと、その目はゆったりと神田を捉えた。
「すいません」
小さく笑みを作って見せ、駆け寄った。その作ったような顔が気に入らず、チッと舌打ちした。
「行くぞ」
UP 04/25/14