きっとヨーロッパの街へ行けば、こんな風景なのだろう。
そう思いながらも、都会育ちのビルだらけの景色に見慣れたには、それが不思議な光景にしか見えなかった。
彼女は
其れを
受け入れられないまま
「あれが、アクマ・・・」
ふよふよと丸い物体から銃口がたくさん出ているものが浮いていた。
神田はすでに六幻を抜刀しており、攻撃される前に何体かのアクマを切っていた。
突然銃口が自分へと向いたことに気付き、は慌てて走り出した。
「うわっ・・・!」
爆風に押されて、は地面に転がった。先ほど自分が立っていた場所がべっこりとへこんでいるのを見て、血の気が引くのがわかった。
「ウッヒャッヒャ!」
「エクソシストー!」
レベル2のアクマが二体楽しそうにを見ていた。
「避けろ!」
「ッ!!」
一体が楽しそうに尻尾を振り上げると同時には数秒後に来る衝撃に備えて頭を抱えた。重い衝撃に、ぐ、と声が漏れ、足元の地面が消えた。浮遊感は一瞬で、背中がレンガの建物に打ち付けられ、眩暈を感じた。げほ、とせき込むと瓦礫が上から落ちてきて、地味に痛い、とは冷静に思った。
弱い奴は死ぬ。かばうのは仕事じゃない。任務遂行に重点を置いている神田だが、まともに攻撃を食らったがふらふらと瓦礫の間から出てきたのを見て、の方へ急ごうとした。だが、次々といつの間にか増えたアクマ達に行く手を阻まれる。
「おい!イノセンスを発動させろ!」
そんなこと言われても、とはちらりと神田を見た。六幻のように手に持つような武器があればなにかしらアプローチが思いつくだろうが、あいにくは手ぶらだ。
「取説なんか貰ってないし・・・!」
小さく愚痴るようにこぼして、自分の手を見た。攻撃を受けたり、瓦礫から抜け出すのに、手は汚れているし、ところどころ切り傷が出来ていた。
「えーい!剣よ!伸びろー!」
やけくそだ、と思いながら、手を上空へと向けて叫んでみた。だが何も起きない。
「ウッヒャッヒャ!」
「ダッセー!ダッセー!」
アクマがバカにするようにげらげらと笑っているのを見て、はムッとした顔を作ったが、内心は焦っていた。念じてだめなら、呪文が違うのか。
「ダッセーエクソシストー!」
「ッ!」
先ほどのように尻尾で攻撃されるのかと思い構えたが、それはぐるっとの身体を包んだ。ハッと息を飲むと、お面が額についているような顔と目があった。
「ダッセー!ヨワヨワ!」
そういうとアクマはの右腕をつまんだ。ひゅっと息を飲んだ。
「う、あああああ!!!!」
ポキッという音が身体の中から聞こえると、激痛が走った。生まれてから一度も骨折など経験したことのないは、耐えきれず叫び声を上げた。ポイッとの身体を再び投げた。
「ウッヒャッヒャ!ヨワヨワ!」
「ダッセー!ニンギョウミタイダ!」
ガシャンと投げつけられた先の窓ガラスが背中に突き刺さったが、それよりも腕の痛みに意識がいっていた。げほ、と咳が出ると、喉の奥が痛んだ。
イノセンスがあるなら、お願い、発動して、と小さく口の中に呟いた。ふわりと身体の周りを風が吹いた。
「あれは・・・」
神田はの身体を光が包むのに気付いた。あの光は、を初めて見たときのものだ。
「なに、これ・・・」
唖然としたようには呟いた。
「ウッヒャッヒャ!ドウシタ!」
『コ・・・コロ、シテ・・・殺シテ・・・』
「ダッセー!ダッセー!」
『ク・・・シ・・・クルシイ・・・』
アクマの身体からミイラのようなものが見えたのだ。それらからまるで機械を通したような声が聞こえた。
「知らない!死にたいんなら、自爆でもなんでもすればいいじゃない!」
「ナンダァ?」
『ク、ルシイ・・・タ、助ケテ・・・』
「オカシクナッタ!ダッセー!」
『オ、ネガイ・・・コワシテ・・・』
「うるさい!勝手にしてよ!」
の悲痛な叫びに、まさか、と神田は呟いた。魂の声が聞こえるのか。
「来るなぁあああああ!!!」
辺り一面が光で包まれた。
UP 04/25/14