「ラスト!ラスト!」
「何よ、エンヴィー?うるさいわねぇ。」
うるさいわねぇ、じゃねーよ!
ラストのおばさんの言葉にムッとしながらも俺は続けた。
「マジなのか!?」
「だから、何が?」
イライラしたような顔で俺を見下ろしたラストに、あの話、と声を更に大きくした。
「が見つかったって・・・!」
ああ、その話、とあっさりと言ったラストに俺は興奮したまま訊いた。
「本当なんだ?!」
「ええ、本当よ。お父様も知っているわ。」
その言葉に俺の心が躍った。
長い間会えなかった少女。
俺に優しくしてくれた少女。
「どこに居るんだ?」
ワクワクしながら訊くとラストは少し目を逸らした。
いつもラストと一緒にいるグラトニーに目を向けると、悲しそうに地面を見ている。
「何だよ?」
はラストにも懐いてたし、グラトニーはに懐いていた。
もっと嬉しそうな顔すればいいはず。
「エンヴィー。」
「だから何だよ?」
腕を組んだままラストが問うた。
「の名前は?」
「はだろ?」
「私達と共通する、の名前は?」
の名前。
忘れてしまう罪。
忘却。
「まさか・・・」
俺は自分に小さく呟いた。
するとラストの惨酷な言葉が俺をどん底に落とした。
「に私達の記憶はないわ。」
そんな馬鹿な。
「あの子は、今、焔の錬金術師のもとに居るわ。」
嘘だ。
「全ての記憶をなくしたまま。」
う そ だ 。
「ふざんけんなよ、ラスト。」
「ふざけてないわ。」
ギロッとラストを睨んだ。
「行くのは勝手だけど。」
くるっと踵をかえして、部屋を出ようとした。
「行かない方がいいわよ。」
「うるさい。」
うるさい、うるさい、うるさい。
『絶対だよ、エンヴィー。』
が俺を。
『エンヴィーの事は絶対忘れないから。』
俺を忘れる訳ないじゃんか。
『何を忘れても、エンヴィーだけは忘れないよ。』
約束したんだ。
黒の中の唯一の銀。
「・・・!」
青い軍人に紛れて、やっと見つけた彼女は。
「・・・・・・?」
振り返って俺を見た。
「・・・」
「・・・・・・?」
不思議そうな顔を一瞬すると―――
『こんにちは。』
―――昔と変わらない笑顔で笑った。
や っ ぱ り 君 も 罪 深 い 。
銀の罪
UP 10/30/05