【Please Give Me a Command】
「やあ」
「清明!」
玄関のドアを開けるとニコニコと笑顔でびしょぬれになった清明が立っていた。手に傘は持っていない。
「ど、どうしたの!?」
「その前に、入っていいかな?」
「あ!ご、ごめんなさい!」
私は慌てて風呂場の棚から乾いたタオルを取りに走った。玄関で待っていた清明にタオルを渡す。
「悪いね」
「清明。こんな時間に来て平気なの?」
夜遅くに清明がくる事は滅多にない。『家族』がいるから。
「平気だよ」
とりあえず清明はうちに置いてあった自分の着替えに着替える事にした。その間に私は不思議に思いながらアールグレイを淹れる事にした。
「」
「ひゃッ・・・!」
突然後ろから清明の腕が私を抱きしめて耳元で呼ばれて驚いた。
「せ、清明・・・」
「何?」
「お茶、淹れようとしてるんだけど・・・」
「うん」
いや、ウンじゃなくてね。
困ったように後ろを向こうとすると意外にもあっさりと離してくれた。不思議に思って名前呼ぶと清明は、おなかすいた、と笑った。
食べてきたんじゃないの?振り返ると何も聞けなくなって私は頷いて冷蔵庫にあるもので炒飯を作った。
「いただきます」
「どうぞ」
食事をする姿がここまで綺麗だと感じさせる人も滅多に居ないだろう。
「そんなに食べてる所見られると恥ずかしいんだけどな」
清明は滅多に人前で食事をしない。
「おいしいかなぁ、って。考えてただけ」
「美味しいよ」
こうやって私の前で食事をする清明は、特別。良かったと笑う。
「何?自信の無いものを俺に食べさせたわけ?」
「じ、自信が無いって言うか・・・口に合うか心配だっただけで・・・」
「まあ、が作ったものなら美味しいことは間違いないけどね」
よくもまあそんな恥ずかしい台詞を・・・
私は思わず熱くなった顔を隠すように立ち上がって紅茶をもう一度入れようとした。でも立ち上がろうとした私の手を反対側に座ってた清明の手が掴んだ。
「ちょ、清明・・・」
「」
さっきの微笑みは消えて、真剣な真っ直ぐな眼。
「君は俺のものだよ」
え、と小さく問い返す。
「は俺ので。俺はのだ」
その言葉に驚いた。
今まで私が清明のものだと思った事があっても、清明が私のものだなんて考えもしなかった。
「清明が、私の・・・」
「そう。愛し合ってる二人。繋がってる二人」
そう言うと清明はグイッと私を引っ張ってキスした。
「だから忘れないで、」
貴方が望むなら。
「どんな事があっても」
どんな事でも。
「俺は君を愛してるよ」
命令を実行しましょう。
UP 10/30/05