ヴァリアー幹部が到着したという連絡を受け、は早足で彼等が居るであろう場所へ向かった。
長い銀髪を階下に見つけ、階段を駆け下りた。
「スクアーロ!」
ふわりと笑ったにスクアーロは、よお゛、と返した。
元々ヴァリアーに所属していたは幹部の中でもスクアーロと親しかった。もちろん、他のメンバー達よりもザンザスとの付き合いが長いことも理由の一つなのだろうが。嬉しそうなの顔にスクアーロも笑みを浮かべた。
「久しぶりだなぁ!元気にしてたかぁ?」
「うん、元気だよ」
「そおかぁ」
「スクアーロも元気そうだね」
が嬉しそうに笑うと、スクアーロの後ろから不満気な声が上がった。
「なーんで、スクアーロが先なわけ?普通王子に挨拶するのが先じゃね?常識じゃね?」
ベル、と苦笑を浮かべては、ごめん、と素直に謝った。
「ベルも元気そうだね」
「うししっ。当たり前じゃん。俺王子だし」
「そうだね。でも、ベルが来てるなんて思わなかった」
「何だよ、それ。王子に対する暴言?」
「いや、そうじゃなくて。突然来てるって聞いたし」
事前に連絡が行っていなかったことを伝えるに、あらぁ、と別の声が会話に交ざった。
「聞いてなかったのぉ?」
「聞いてなかったよ」
だから驚いた、とルッスーリアに苦笑してみせるの顔を静かに見ながら、スクアーロは眉を寄せた。
「そうそう!にぴったりのがあるのよ!」
パンと両手を合わせて、体をくねくねさせるルッスーリアには、ぴったり?と首をかしげた。
するとどこからか、四角い箱を取り出してに差し出した。
「はい!これ!」
それと同時に、が先ほど降りてきた階段から山本に引き摺られている獄寺の、てめっはなせ、と叫んでいる声が大きなホールの中で響いた。その瞬間僅かにの体が強張ったことにスクアーロ以外は誰も気付かなかった。
「う゛お゛おぉぉい、うるせーぞぉ!」
「スクアーロの声のがうるさいよ」
ベルの突っ込みをスクアーロは無視した。はゆっくりと二階にいる二人に顔を向けた。
「よお!スクアーロ!あいかわらずなのな!」
「っ!放せって言ってんだろうが!」
ぶんと腕を振り上げて、掴まれていた腕を解放させた獄寺は舌打ちした。そんな様子には呆れた目を向けた。
「あいかわらずねー」
楽しそうに笑ったルッスーリアの隣でベルが、バカだね、と言って、うししっ、と笑った。
それでも嬉しそうな様子の面々には胸の奥がどこか苦しく感じた。一瞬の痛みに気付かないふりをして、階段を下りてくる二人に再び目を向ける。
「うお、ツナ!?」
山本の声に、スクアーロ達は笑った。
「さっき、あっちで会ったのに!」
「お前な!十代目なわけねーだろ!」
怒る獄寺と反対に、山本はじーっとを見た。
「十代目の影の、だ」
は笑みを浮かべながら自己紹介した。その顔と紹介に、スクアーロは顔を顰め、ルッスーリアは表情を曇らせた。だが、獄寺も山本も気付かなかった。
「カゲ?」
「影武者だ」
首を傾げた山本に、が答えた。
「おお、影武者か!なんか忍者みてーなのな」
歯を見せて笑った男に、はふっと笑った。その表情に獄寺は、胸の奥になにかがつかえる感覚を覚えた。
「スクアーロたち、知ってんのな」
「ああ。僕も元々ヴァリアーだからな」
へえー、と感心する声を出した山本とは反対に、獄寺は顔を顰めたままだった。は、では、とルッスーリアに貰った箱を持ったまま、軽く会釈した。
「それでは、仕事があるので、失礼します」
ルッスーリアが引き留めようとする前に、はさっさとその場を去った。
自室に戻ったは、ベッドに箱の中身を置いた。
「こんなの、着れるわけないだろ・・・」
ため息交じりにそれを見た。ひらひらした裾の真っ赤なドレス。
最後に女物の服を着たのはいつだったか。思い出せないほど昔のことだと、は目を閉じた。
痛みなんて
感じていない
、ふりをする
UP 05/13/14