作戦はシンプルだ。綱吉の代わりに、影武者であるが取引に向かう。万が一のことがあった場合は、合図をが出す。合図があれば、外で待機していた班が突入する。だが、予定時刻よりも遅いに、待機を言われてた獄寺は待てずに、吸っていたタバコを地面へ投げた。
「ッ!」
がこん、とドアを蹴り開けた獄寺は、息をのんだ。
部屋の中央で、一人立っている人物。周りには、取引相手だったであろう男たちが倒れていた。その手には一瞬炎が見えたように思った。十代目によく似ているからだ、と頭の中で呟いた。
肩で息をする人物は、ゆっくり振り返った。獄寺をとらえた目は、大きく開かれる。
「な――!」
何かを言おうと開いた口は、何かを紡ぐ前に、視界の端で倒れていた男の一人が動くのを捉えた。
向けられた銃口。銃声が響いた。体に感じた衝撃。
「ッ!」
しかし、地面についた尻以外に痛みはなかった。ハッと目を開けば、部屋の中心に居たはずの人物がうんと近い距離にいることに驚いた。しかめた顔に、かばわれた、とわかった。チッと舌打ちが耳に入って、もうひとつ銃声が響いた。視線を動かすと、先ほどこちらへ向いていた銃はもう地面に転がっていた。
「おま――」
スッとは立ちあがった。左手を押さえたまま、帰る、とが言った。止める間もなく、は部屋を出て行った。
外で待っていた山本がの姿にぎょっと目を丸くした。
「大丈夫か!?」
「ああ、かすっただけだ」
車に乗っていた救急箱を慌てて取りだした山本は、が抵抗する間もなく袖をまくって手当をはじめた。山本は、あとから歩いてきた獄寺を見て、怪我ねえな、と返した。
「顔は怪我ないのなー」
山本が消毒液を腕につけながら、の頬を見て言った。
「当たり前だ。十代目の顔にない怪我があっては、いざというときに影武者ができない」
きっぱりと言い放ったに、山本と獄寺は一瞬動きを止めた。
「そんなのしょうがねえじゃん」
「僕は影だ」
それだけのために自分が居る、と言うかのような姿に、山本は獄寺と目を合わせた。
「獄寺隼人」
「な、なんだよ」
「二度とするな」
が鋭い視線を送ると、獄寺は体を固くした。
「作戦通りに動かなければ、命を落とす可能性もある」
現に自分が撃たれそうになった獄寺は、冷たい傷ついた獣のような眼に、言葉をなくした。
「二度と、僕を助けようとするな」
闇闇
夜夜
紛紛 にに
れれ
るる
影影 懐懐
をを 柔柔
しし
とと よよ
しし うう
てて
はは なな
らら
なな
いい
UP 05/22/14