奴等の中では自然体の君
華やかなパーティーから戻った綱吉は、疲れたー、と身体を伸ばした。
「お疲れさまでした!」
「獄寺君も、山本も、お疲れさま」
「飯うまかったなー」
そこで三人の耳に、声が届いた。
「はい、ザンザスの分」
階下では、ヴァリア―の面々が揃っていた。げ、と綱吉は頬を引きつらせ、咄嗟に隠れた。首を傾げながらも、獄寺はそれに倣った。山本は楽しそうだ、とうきうきとそれに倣った。
「はい、スクアーロ」
「ありがとよぉ」
「ちょっと、、王子よりサメが先っておかしくね?」
「ベル、ココアがいいでしょ?」
今ちゃんとミルク温めてるから、と答えたのはだ。その姿に隠れた三人は驚いた。微笑みを浮かべているのだ。とても柔らかい笑みを。
元々ヴァリア―にいたのだとは聞いていた。獄寺と山本は彼らといるところを見たことだってある。しかし、こんな表情豊かではなかった。言葉づかいもいつもの硬い感じはない。
「」
低い声が呼んだ。
「なに、ザンザス?」
は首を傾げてザンザスを見た。
「なんで、パーティーにいなかった?」
突然の話題に、はぴたりと動きを止めた。
「どうしたの?突然」
「答えろ」
ザンザスの疑問は、綱吉も思ったことだった。会場を見渡しても、自身に似た姿はなかったのだ。
「僕がパーティーに出ないのはいつものことじゃないか」
今に始まったことではないのか、と三人は知った。
「十代目と間違われたら面倒でしょ」
もっともだ、と獄寺と綱吉は心の中で同意した。だが、山本は、そんな間違えるほどか、と自身が間違えたことを棚に上げて首を傾げた。
「まあまあ、ボス。ちゃんとこうしてに会えたんだし」
不穏な空気を変えるように、ルッスーリアが明るい声をあげた。
「おいしいクッキーだって焼いてくれてたんだし!」
「ボスいらねーなら、王子もらうよ」
「こら、だめよ、ベルちゃん」
しかし、ザンザスの目はから外れない。
「ドレスだってやっただろ」
「僕にドレス着ろって方が、無理難題だよ」
困ったようにが返した。
ドレス、という単語にぴたりと隠れている三人の動きが止まった。
「女なんだから、別に問題ない。胸はちいせえが」
「あのね・・・」
が頬を引きつらせた。
「お、お、お、女の子おぉぉおおおお!?!?!」
突然ホールに響いた声に、全員の視線が集まった。
「あーら、三人とも。そんなとこでなにしてるの?」
ルッスーリアが、くねくねとしながら問うた。ばれてしまったことに焦りながらも、驚きの方が勝っていた綱吉たちは、素直に階下へと降りた。
「あ、あの、さん、って・・・」
「ああ?」
ザンザスが不機嫌そうに睨むと、綱吉は、ひぃ、と小さく叫び声をあげた。
「先ほど十代目がおっしゃった通りです」
が静かに答えた。
そして、綱吉はあんぐりと口を開き、獄寺は、ぽろっと加えていた煙草を落とした。山本は、ははは、と実に楽しそうな声で笑った。
「おい」
いつの間にか立ったザンザスはの腕を掴んで引っ張った。うわ、と小さく声をあげたは、目を閉じた。ボフッとザンザスのコートに顔がぶつかった。
「こいつは、今夜連れて帰る」
いないからって騒ぐなよ、と告げたザンザスはそのままの手を引いて屋敷の出口へと足を進めた。その後ろを嬉しそうにヴァリア―の面々が続いた。
「ボス!お待ちください!」
「やりー。のご飯食べれるじゃん」
「さっさと帰って寝るぞぉ」
「それじゃーねえ、ブォンナノッテ!」
嵐が去ったあとのように、沈黙が広がった。
「え、えーと、とりあえず、俺たちも寝る?」
「そうだな」
「それにしても、さんが女の子だなんて気付かなかったよ・・・」
たち振る舞いが自身よりもかっこいいのではないだろうか、と綱吉は肩を落とした。
「やー、最初はツナによく似てると思ったけど、女だってすぐわかったぜ?」
「え、山本わかったの!?ご、獄寺くんは?」
反応がないことを、不思議に思いながらそちらをみた。
「・・・獄寺君?」
去っていった扉を呆然と見つめていた友人は、しばらく反応がなかった。
UP 05/13/14