「今日は、奥様がお客様を連れてらっしゃる日ですね」
「ふーん。だれ?」
「さあ、お仕事仲間と言ってましたけど」
「仕事しろ」

ニコレッタに小言を言って、ルチアーノはホールへ戻っていった。



仕事でみかけたひと



「ブォナセーラ」
「チャオ、ヴィート」
「素敵な感じね」

聞き覚えのある声にルチアーノは、ハッと振り返った。数日前に何も言わずに自身の前を通り過ぎて行った人物。


「ルチアーノ?」

驚いたように二人の目が見開いた。

「あら、二人知り合いなの?」

オルガが面白いものを見つけたように笑った。ヴィートはの肩からコートを取ると、こちらです、と取ってあったテーブルへと案内した。

「劇場で何度か会ったの」
「そういえば、も観劇が趣味だったわね」

オルガはワイングラスに口をつけた。あんなルチアーノ初めて見たわ、と笑った。

「おいしい」
「でしょー」

料理を口に運んだがいうとオルガは自慢げに笑った。

「素敵なリストランテね」

ホールの中をは見回しながら言った。

「料理もおいしい。カメリエーレもハンサム揃い。内装も綺麗」

これ以上ないリストランテだわ、と褒めれば、オルガはとても嬉しそうに頷いた。そんな二人の様子を他のテーブルを給仕しながら、ルチアーノはちらりと見ていた。

「ドルチェもおいしいー」

そういえば甘いもの好きだったわ、とオルガはドルチェに夢中なを見て思った。

「弁護士だったのか」

食事が終わり、もっと話したいというオルガの希望でまかない部屋に移動した。オルガに仕事の電話が入り、一人で待っていたところに声がかかった。

「ううん、会計士。オルガのいる事務所がクライアントなの」

入口へ視線を向けては答えた。

「カメリエーレだったのね」
「ああ」
「世界は狭いねー。まさか知り合いの知り合いとは」

まったくだ、とルチアーノは小さく返した。そして、ふと数日前の出来事を思い出した。

「・・・この前」
「ん?」
「この前、居ただろう」

その言葉には、ああ、と頷いた。

「せっかくの家族水入らずのところに入っていったりしないわ」
「は?」

何のことだ、と不機嫌そうにルチアーノが問うた。

「奥さんと息子さんと居たんでしょ?」
「・・・孫とオーナー夫人の娘だ」

ニコレッタと夫婦に見えたらしい。誰があんなのを嫁に取るか、と内心毒づいた。

「あら、そうだったの」

あっけらかんと返したにルチアーノは肩の力が抜けるのがわかった。深い意味はなかったのか。

「大体夫婦だったとして、挨拶ぐらいはしろ」
「いやー、悪いかなと思って」
「日本人は、そんなことで挨拶しないのか」
「いや、それは、違う、かな?」

はうーんと首を捻った。

「とにかく、挨拶くらいはしろ」
「ふふ、以後気をつけま〜す」




UP 05/04/14



おまけ

「なんでアタシがルチアーノの奥さん・・・」
「見えねえよな」
「なんか面白いことになりそうねえ」