貴 方 が 好 き で す
感謝したい恋
私は亮と別れた。自分から告げた勝手な別れ。それでも私は、悲しかった。
まだ、好きだったから。
別れた日から静かに教室で外から聞こえるテニスボールの音と部員達の掛け声を聞いていた。其処に忍足君が来た。
相当参っていた顔をしていたらしく、抱きしめられて告白された。忍足君はつらそうな声で私に好きだと伝えてくれた。私は、付き合えない、と答えようとした。でも、忍足君は、返事はいらない、と私に言った。
「の事やから、俺を利用するみたいなんは、嫌やろからな」
「ごめん・・・・・・」
「謝んなや。俺の事は気にせんと利用してもらいたいくらいなんやから」
そして私は忍足君に抱きしめられたまま泣いてしまった。
「。ホンマに付き合うてくれへんか?・・・今すぐ言わへん。少しずつでええから俺を見てほしいねん」
「忍足君・・・」
「それとも、俺が嫌いなん?」
「ち、違うの・・・でも、その・・・」
切なそうな瞳で見られて言葉に詰まってしまった。彼は嫌いじゃない。けど、そういう対象としてみた事がなくって困った。優しい忍足君は、もう少し待ってくれる事になった。
数日後に私は忍足君と付き合うことになった。
忍足君はとても優しくて、私の嫌がることはしない。手をつなぐのだって、ええか?、と聞いてから。彼の気遣いがとても嬉しかった。現金だといわれるかもしれない。
でも今、私は彼が好きだった。
「。手、つないでもええか?」
私が頷くと嬉しそうに笑って私の手を引いてくれた。
「なんや、今日は機嫌ええなぁ?なんかええ事あったん?」
「え?そうかな・・・?」
「さっきからめっさかわええ顔しとる。」
可愛いという言葉に反応してしまって顔が熱くなるのがわかった。
「な、何言って―――」
「まぁ、がかわええのは前からやけどな」
私は赤い顔を見られたくなくて思わず下を向いた。くくっと笑いを耐えようとしているのがわかる。からかわれた・・・
いつも私は忍足君にからかわれる、でも嫌な感じじゃなくて恥ずかしい感じ。亮とは、絶対に無かった事。
「ホンマ、かわええなぁ・・・」
顔を上げようとすればまた言われる。
「忍足君って、意地悪・・・」
「好きな子ほど虐めたくなる、って言うやろ?俺そう言う奴やねん」
忍足君は本当に自然に私に『好き』だということを言ってくれる。そう言うところが私は嬉しかった。でも、きっと忍足君は私の今の気持ちを知らない。
ねぇ、忍足君。私、今は、貴方が好きなんです。
ギュッと手を少し強く握った。私の行動に驚いた忍足君は、目を大きく見開いて私を見た。
「ホンマに、どないしたん?」
「忍足君」
「ん?」
「あの、ね・・・」
手を離して忍足君の正面に立つ。
恥ずかしい・・・でも、言いたい・・・伝えたい・・・私の気持ち・・・
「私、忍足君に好きって言ってもらうのが、好きだよ・・・」
「ぇ?」
「好きになってくれて、ありがとう・・・」
呆けた瞬間、忍足君に抱きしめられた。
「ホンマ、、最高やん・・・」
私を『好き』だと言ってくれて有難う。
私を助けてくれて有難う。
言葉じゃ言い切れない、感謝の気持ち。
貴方に届いてほしい。
◇FIN◇
07/10/04