やるせない恋


「忍足君?」
「まだ居ったんか?
「う、うん。ちょっと、ね」

歯切れの悪い所が気になったけど俺は何も言わんかった。。俺の彼女や。けど、彼女が俺を好きかなんてわからへん。
否、わかっとる。
彼女はまだ宍戸が好きなはずや。彼女は、宍戸の彼女やったから。

「ほな、一緒に帰ろか?」
「え?」
「嫌なん?」
「う、ううん!違うよ・・・」


彼女が此処に居るのがその証拠。さりげなく窓から目線を外させようとする彼女。窓から見えるテニス部が騒いでいた場所。今も後輩と練習している宍戸が居るテニスコート。


「ほな行こか?」
「うん。」

教室を出て何でもない話をした。

「そんでなー、今日滅茶苦茶ドジしてもうてん」
「何したの?」
「科学の時間に数学の教科書持ってってしもて・・・」
「あはは、波澄先生怒ってたんじゃない?」
「笑い事やあらへん・・・アレは恐ろしかった・・・」

大袈裟に言うと、私もやらないようにしないと、といった彼女は笑顔だった。

「ぁ・・・・・・」
「どないしたん?」
「え・・・あ、な、何でもないよ」

突然声をあげた彼女を不思議に思うた。問うても慌てて誤魔化そうとしとる。さっきまでのの視線を追ってみた。
ああ、そうか。そう言うことやったんか。アイツを見つけたんか。


「早く行こう。忍足君」
「あぁ、せやな」

ぎこちない笑顔を安心させるように微笑んだ。は、俺に気使っとるんや。

「なあ、
「なぁに?」
「手、繋いでもええか?」
「え・・・!?」

突然の俺の言葉に驚きの声をあげた。

「あかん?」
「い、いいけど・・・」

恥ずかしそうに俯いたを見て、俺は、やっぱり可愛ええなぁ、なんて思うた。そっと手を握るとの手は、やっぱり俺の手と違うて柔らかかった。
アイツもこんな風にと手を繋いだんやろか。いつもの照れ隠しの時だけする不機嫌そうな顔をして。と手を繋いだんやろか。


「な、なぁに?」
「ゆっくりでええよ」
「え・・・・・・」
「ずっと待っとるから」


お前が俺を好きになってくれるまで。


ずっと



◆FIN◆

06/08/07