ど う し た ら 、 僕 を 見 て く れ ま す か ? 




切ない恋







「あれ??」
「あ・・・忍足君・・・部活終わったんだ・・・?」
「ん?ああ、自分何してん?」
「え・・・・・・別に何でもないよ?」
「何も無くてこないな時間まで学校に居るんか?」

は何の部活にも入ってないはずや。何でこんな時間に教室に居るんや?

「いいじゃない?ちょっと疲れて寝ちゃったの」
「そんなわけ・・・・・・ぁ・・・宍戸・・・・?」

俺がに問い詰めよ、思たら大事な事を忘れとったことに気付いた。は、宍戸の彼女や。ビクッと困った顔で俺を見た。

「約束でもしてたん?」

聞くまでもないやろ、と俺は自分の阿呆な質問に心の中で苦笑した。けど変やな、さっき宍戸は鳳と帰っとったはずや。

「え、あ・・・違うよ・・・」

泣いてるような顔で笑っても全然説得力ないんやけど・・・は嘘つくんが下手なんやな・・・

「なあ、?」
「・・・何?」

紅い夕日が教室の窓から入ってくるとは窓のほうへ近づいてった。俺はその背中を見とって、なんやが風に攫われてまう様な気がした。

「楽しいんか?」
「え・・・・・・?」
「宍戸と居って、ホンマに幸せなん?」
「忍足君・・・・・・」
「俺には、なんやが最近楽しそうに見えへんねん。」

なんでや?俺が泣きそうやん・・・何で自分は泣かんねん?そう言うたらは怒るんやろか?
窓に向けておった顔をは体ごと俺に向けた。逆光になっての顔がはっきり見えへん。

「忍足君」
「なんや・・・?」
「ありがとう」
「何言うてん・・・?」
「心配してくれてるんでしょ?」

ただの心配やと思っとるんか?ホンマならこないな心配の仕方せえへんて。

「大丈夫よ。もう、大丈夫だから」
「何がや・・・自分の何処が・・・!」
「忍足君、私は大丈夫、なんだよ・・・」
「だから、何言うて・・・・・・!」
「忍足君・・・どうして?・・・・どうして忍足君がそんな顔するの・・・?」

泣いてるような目で笑顔を作るが俺の前に歩いてきて俺はを抱きしめた。

「っ!?」
「もう見てられへんねん!が、そないな顔するんわ!」
「お、したり・・・くん・・・・・・?」
「俺かて・・・俺かて、が好きやのに・・・・・・!」
「ぇ・・・!?」
「好きや・・・・・・」
「忍足君・・・・・・」

しばらく続いた沈黙の後、は俺に言うた。

「ありがと・・・でも・・・・・・」
「返事は今はええ」
「・・・・・・」
の事やから、俺を利用するみたいなんは、嫌やろからな」
「ごめん・・・・・・」
「謝んなや。俺の事は気にせんと利用してもらいたいくらいなんやから」

へらへらと軽く見せる為に笑ろた。そしたら、は首を左右に振った。

「違うの・・・本当は・・・・・・」
「・・・?」
「私達、もう別かれたの・・・」
「なん、やて・・・?」
「本当は昨日別れてたの」
「・・・・・・」
「だからいいんだよ、私は・・・大丈夫・・・」
・・・・・・」

から弱弱しい微笑みが消えてぽろぽろと涙が零れ出してしもた。俺は、またを抱きしめた。今度はそっと、優しく。

「すまん・・・泣かせたいわけやなかってん・・・」
「ううん・・・ごめんね・・・」

はそのまましばらく泣いとった。俺は抱きしめたままゆっくりの髪を撫でて自分の顔をの綺麗な髪に埋めて自分の涙を隠した。長い静かな時が過ぎて俺達は綺麗に染まる紅い夕日の空の下を帰っとった。そして、その夜に俺が願ったのは、がまた笑ろてくれる事やった。



◆FIN◆



03/26/04