こ ん な 恋 も 悪 く な い か も し れ な い
忍ぶ恋
「忍足君」
にっこりと笑うさんはとても可愛い。まあ、惚れた欲目かもしれんけどな。はい、と目の前に小さな箱が差し出された。どうしたらええかわからんかった俺は、へ、と間抜けな声をあげてその箱を見た。
「お誕生日おめでとう」
「え・・・・・・?」
どうして知ってるんやろ・・・
不思議に思ったのが顔に出たらしい。さんはクスッと笑うて説明した。
「亮君が、明日は大変だ、って言ってたから」
さんは、宍戸と最近付き合いだした。せやから、俺はこの胸の奥でジリジリとする痛みを無視した。さんが凄く嬉しそうやったから。
「明日は忍足の誕生日だからテニス部がいつもよりうるさくなるなぁ、って」
「せやったんか」
うん、と頷くさんを見て、おおきに、と礼を言ってから箱を受け取った。俺幸せもんやなぁ、好きな子から誕生日祝ってもらえるなんて。
「あ。でも大した物じゃないんだ・・・」
「何言うてん?さんから貰うたら俺にとっては一番のプレゼントや」
「あはは、そう言ってもらえれば幸いです」
笑いながら言うさん。ほんまなんやけどなぁ。さんから貰うプレゼントが一番俺が欲しい物やねん。言うたらアカン、この気持ち。宍戸と仲良くなったからこそ、俺もさんと話す機会が出来たんや。
「そうや、さん」
「何?」
首を傾げて、なんや小動物見たいやなぁ、なんて思うてしもた。
「今日な、放課後、テニス部出るなって跡部に言われてん。一緒に暇つぶしに行ってくれへん?」
「え?」
少しふざけた言い方をせなアカン。でも、これ位なら許されるやろ、宍戸。お前はいつでも一緒に居られるんやから。
「今日、放課後デートせえへんか?」
ぷ、と俺の表現に噴出して、私でよかったら、と笑うた。
「ほな、約束」
「約束」
小指を出すと細い柔らかい小指を絡ませた。さんは、それじゃあ放課後に、と言ってパタパタと走って行った。俺はその場を離れて静かな屋上につくと渡された箱を開けた。綺麗な写真立ての中には、この間テニス部の数人で撮った修学旅行の時の写真。俺は持っていない写真や。
俺と宍戸とさんとマネの。
「なんや、邪魔なもんが居るけど・・・隣同士だからええか」
思わず笑みが浮かんでしまう。なんや、忍ぶ恋も案外ええ時もあるかもしれんなぁ・・・
なんせ、こないに貴重な物が誕生日に貰えるんやから。
◇FIN◇
HAPPY B-DAY 忍足侑士!
やっぱり彼には「色々な恋20のお題」。
10/14/04