他の軍人に囲まれて冷たく暗い部屋へ入った。ガチャリと開いた扉から入ってきた人の気配に反応することもなく、ただ縛り付けられた椅子に座っていた。女の目は虚ろだった。元々は私と同じ超人機関の実験体だったが、逃げ出して、いつのまにかソレスタルビーイングの一員になった女。
研究所では最高傑作と呼ばれていたらしい。とても優秀だと言われたその能力を使って逃げ出したのだと聞いた。その能力の高さを知っているからこそ、死なない程度に、しかし逃げ出すことが出来ないように、その体力を最低限まで奪い取った。その上、様々な拷問を受けただろう。。それでもソレスタルビーイングについて何一つ口にしないという。たいしたものだ。
青白い顔は捕まった当初よりもずいぶん痩せている。一体どんな薬をどれだけ使用されたのだろうか。公でない捕虜への軍の扱いなど、酷いものだ。それが、元々ここにいたものならば、特に。

「おい」

反応のない相手の番号を呼んだ。すると、虚ろだった目が私に向けられると、徐々大きくなり、私に焦点を合わせた。信じられないものを見るような眼に、私はいらいらした。なんだ、その眼は。
一人の部下が口についていたマスクをはずす。

「・・・・・・んだ・・・」

弱弱しい声で呟かれた言葉に眉を寄せた。

「何?」

私の問いかけに一瞬目を見開くと弱弱しく微笑んだ。何故、笑う?






「あなたが、
   いきていてくれて、
         よかった」






UP 04/03/09