そ し て 世 界 が 変 わ っ て い く



幻海が弟子をとった。
浦飯幽助という人間の男。
落ち着いてきた生活が一気に騒がしくなった元凶。

「くそばばあ!どこに行きやがった!」

ああ、うるさい。

「幻海なら出かけたよ。」

うるさい声が聞こえた庭の見える縁側に立つと、あちこちに擦り傷や切り傷を負った幽助が立っていた。

「なっ、なにぃ〜!?」

・・・本当に騒がしい奴だ。

「幻海も面倒事を押し付けるもんだ。馬鹿の見張りをしてろ、なんて。」
「誰が馬鹿だ!」
「お前以外に誰がいる。」

きっぱりと答えた私に幽助は言葉に詰まった。

「ああ、チクショウ!もう疲れた!」

どさ、と縁側に腰掛けた幽助に、サボる気か、と問えば、休憩、と返された。

「・・・五分だけだ。」
「おう!」

嬉しそうに笑った相手に、水の入ったコップを渡せば、サンキュ、と短く礼が返ってくる。
やっぱり不思議な奴だと感じる。文句を言う割には、結構ちゃんと修行をしている。いい奴なんだか、悪い奴なんだか、よくわからない。

「そういえば、訊こうと思ってたんだけどよ。バアサンの弟子なのか?」
「誰が?」
以外に誰が居るんだよ。」

確かに、今この屋敷には私と幽助しか居ない。

「違う。」
「へえ〜。違うのか。」

幽助は、少し意外そうな顔で私の答えに反応した。

「霊光波動拳を身につけても、使うつもりがないからな。」

訊かれてもいないのに言う自分に正直驚いた。

「次の世代に伝えるつもりの無いものを受け継いでも意味がない。」

幻海は次世代に霊光波動拳を伝える為に弟子をとった。

「まあ、確かに。そりゃーそうだな。」

納得したように頷いた幽助が振り返った。

「何で伝えるつもりが無いんだ?」

まるで幼い子供のように次々と質問を出す相手を前に私は眉根を寄せた。

「面倒臭い。」

何だそれ、と呆れた顔で幽助が私を見た。それと同時に私は幽助の頭へ足を蹴り上げた。

「のわっ!何しやがる!」
「五分終了だ。」

鬼、と叫んだ幽助に傍にあったコップを投げつけた。幽助は、いてー、と反射的に叫び、コップの当たった額を抑えた。

「さっさと修行はじめろ。」

文句を言われる前に続けた。

「もうすぐ幻海が帰ってくるぞ。」

慌てて修行を開始して、悔しそうな顔をする幽助が面白く見えた。




UP 060408