物語突然



「伊集院さん・・・?」

突然視界に入った姿に蔵馬は驚いた。視線に気付いて女が振り向いた。

「南野君?」

きょとんとした表情は一瞬で、にっこりと笑顔になった。そして、二人の前に近づいた。

「どうして、こんな所に?」

人間の来るところじゃないと含むように蔵馬が言うと、笑顔のまま答えた。

「応援に来たんだよ」

誰の、と聞く前には続けた。

「南野君こそなんでここに居るの?」
「俺は、ゲストチームで呼ばれて・・・」
「ゲストチーム?」

は首を傾げた。

「ゲストチームに南野君の名前なかったよね?」
「ああ、南野秀一は人間の俺の名前なんだ」

蔵馬だと説明すると、なるほど、とは納得したように呟いた。

「私そろそろ行かなきゃ、またね。試合頑張って!」

蔵馬が引き留める前に、は手を振りながら駆け足で去った。

「こんなとこでナンパかよ?隅に置けねえな〜」
「誰だよ?!あの美人!」

にやにやした顔で幽助が蔵馬の肩に腕をまわし、桑原はが去った方を指さしながら問うた。

「同級生ですよ」
「え、同級生!?」
「妖怪だったのか?」

告げられた関係に二人がぎょっと目を丸くした。

「いや、彼女は確かに人間なはずだ。少しは霊力があるとは思っていたが、まさかこんな所に来るような人だとは・・・」
「まさか、参加者なのか?!」
「あんな可愛い子ちゃんが?!」

蔵馬は、二人の問いかけを否定した。

「応援だと言っていた」
「応援って、誰の応援だよ?」
「そこまでは・・・」

はて、と幽助と桑原は顔を見合わせた。



*** *** ***



「ずいぶん遅かったね」
「ごめんなさい、ちょっと人と話してて」
「・・・知り合いでも居たのかい?」
「同級生が居たの」

そんなことはないだろう、と思いながらも問うた左京の耳には行ったのは肯定の言葉。びっくりしちゃった、と言うを左京はわずかに驚いたように見た。

「南野君って、学年でテストの成績がいつも一番なの。蔵馬って名前でゲストチームに参加してるんだって」
「ほお」

妖孤蔵馬と魔界でも悪名高い妖怪が人間に憑依したとか、とゲストチームの情報を思い出した。まさかの同級生だったとはな、と心の中で呟いた。

「クラスの女の子たちとかが、いっつも噂話してるの。南野君かっこいいー!っていつも言ってるよ」

クラスメイトの真似でもしているのだろう。いつもより声を高くして話すに左京は笑った。

「蔵馬と言えば、確かゲストチームの妖怪だったね」

まるで思い出したように言う左京に、は、そうなの、と肯定した。

「なんか普通の人と違うな〜って思ってはいたんだけどね、まさか妖怪だったとは思わなかった」
「ほお」

普段はきっちり妖気を抑えているのか、と左京はの言葉から思った。

「ほとんど話したことなかったし」
「そうか」

さて、と左京が立ちあがった。

「ディナーにでも行こうか」
「はーい」

は嬉しそうに左京の横に立った。

「お腹すいた」
「そうだな」

ふっと左京は隣に立ったに微笑んでから、歩き出した。



UP 09/24/2013