「伊集院さん」
「あ、南野君。お疲れさま。私のこと、でいいよ」
こんなところで出会った縁ってことで、と笑ったに蔵馬は同意した。
「俺も蔵馬で」
「蔵馬ね」
「は、誰の応援に?」
「ああ、父がチームのオーナーでね。その応援」
父親がオーナー、という言葉をあっさりと言ったに驚いた。暗黒武術会にチームを出す人間は闇社会の人間ばかりだ。そんな闇社会に居るような人間の娘には見えない。
「とっても強いチームだから。蔵馬が決勝戦まで残ったらあたるかな?」
ふふっといたずらっ子のような笑みを浮かべたに、蔵馬は、そりゃあ強いね、と返した。誰の居るチームだかわかれば、戦いづらくなるだろう。蔵馬はそれ以上の追及はやめた。
「あ、蔵馬」
「あ、あの可愛い子ちゃん!」
ニマニマした顔の幽助と声を裏返した桑原が寄ってきた。
「はじめまして?」
小首をかしげながらが言った。それぞれが自己紹介をした。
「私は、伊集院。南野く、蔵馬の同級生です」
言いなおしたに、蔵馬はふっと笑った。
「蔵馬の同級生ってことは、俺らより年上か」
「見えねー」
桑原と幽助が言うと、年下?とは首を傾げた。すると二人は皿屋敷中学へ行っていると告げた。そこからの言葉は崩れた。桑原君も普通に喋ってね、と付け足した。
「それにしても、皆災難だったね」
の言葉に、それぞれが連続で試合をさせられたことを思った。
「大会本部も汚ねえよな」
「まったくだ」
「これからは大丈夫だと思うけどね」
苦笑を浮かべたに、蔵馬はの父は本部なのか、もしくは本部に近い人間なのか、と考えた。
「ッ!」
突然バッとが振り返って避けたものをぱっと手で挟んだ。
「び、っくりしたー」
の手には飛影の刀が挟まれていた。あまりの素早い動きに蔵馬、幽助、桑原の三人は唖然とした。睨みつける相手に、はぱちくりと瞬きした。そして、後ろからなんてびっくりするよ、と手を離した。
「ってことは、貴方が飛影さんね。はじめまして」
「なんだ、貴様は」
は飛影の問いかけに、蔵馬の同級生です、と数分前に自己紹介した言葉を告げた。
「飛影!あぶねーだろ!」
幽助が怒鳴ると、飛影はふんと鼻を鳴らして刀をしまった。
「普通の人間じゃない」
だから大丈夫だ、と言いたげな飛影の言葉には苦笑した。
「そりゃあ、護身術程度はできるけどね」
「ハッ。護身術だと?貴様の身のこなしはそんなもんじゃないだろ」
は困ったように飛影を見たあと、視線を蔵馬達へ向けた。観察するような蔵馬の視線に、苦笑がこぼれた。
「父のビジネスがビジネスだからね。自分の身はしっかり守れなきゃ困るでしょ」
「って強えの?」
「いえ、まだまだだよ。観客席にいるような妖怪なら勝てるけど。皆みたいに強くないんで」
目を輝かせる幽助に、は頬を掻いた。飛影は、不愉快そうに睨んだ。
「わりーな、。飛影っていつもこんなだからよ」
「目つきが悪過ぎて睨む顔意外には見えねーのなんのって」
「気にしてないよ」
にっこりと幽助と桑原に笑って見せた。
「それに、他のチームの応援に来てるってわかってるし、嫌がるのが普通だよ」
苦笑を浮かべたに、俺らは気にしねーよ、と桑原が返した。
「ありがとう」
が返すと、おう、と幽助は笑った。
新しい縁の出来た日
UP 10/27/13