はぎょっと目を丸くして、自分の目を疑った。

「く、桑原君?」

久しぶりの再会の気まずさを感じる暇もない。大雨の中傘も差さないで、と注意する所でもない。あちこち怪我をしているように見える桑原は、同様に怪我をしている人間を複数抱えて歩いていた。なぜと問う前には駆け寄った。

?!」

なんでこんなとこに、と桑原が問うが、答えずに桑原が抱えていた一人を自分の肩に移した。黄色いパーカーを着た少年は、すでに意識がない。

「えっと、久しぶり」

とりあえず挨拶する相手に、おう、と桑原は返した。よいしょ、と肩に腕をまわしていた少年をおんぶした。もう一人くらい引きずれるだろうか、と思案した。

「こいつらは、俺が、運んでやる」

ゼイゼイと息を荒くしながら言う桑原に、は苦笑した。

「怪我人が何言ってんの」

地面に引きずられていた少年をおんぶした少年の後ろから腕をまわすようにした。さすがに足は抱えられない。ずるずると引きずるが、桑原に引きずられた状態よりはいい。

「わりぃな」

桑原の言葉には、小さく笑った。
面倒事なのは確かだ。ただのケンカではないであろうダメージを受けている彼等を見れば一目瞭然だ。何らかのトラブルに巻き込まれていて、それに自分も首をつっこむことになるのだろう。
ずるずると歩いているうちに、桑原の意識が朦朧としだした。

「もう、ダメだ……」
「桑原君?!」

まじ、とが呟くと同時にその体は倒れた。家を知らないのもあるが、これだけの人数を抱えて歩くことはできない。ただでさえ、意識のない二人分の重さに体は負担を感じているのだ。
は、ふと周りを見た。こんな時間ではそうそう人は通りかからない。というよりも、通りかかっても厄介事以外の何物にも見えない集団を助けようと思う酔狂な人間はそうそういないだろう。

「どうしよ」

小さく呟いたの耳に助けの声が入った。

「くわばらー!うおーい!」

ハッと顔をその声の方へと向けた。

「浦飯君」

おーい、という声に返すように、も大きく呼び返した。するとその声を聞いた幽助が走って来た。姿が見えた幽助は目を大きく開いた。

!おめーなにやってんだよ!?」
「いや、偶然通りかかったもんで…」

苦笑を浮かべながら二人抱えているから、行き倒れたように地面に伏した桑原たちに視線を向けた。

「桑原!」

ガッと桑原を抱え上げた。

、二人大丈夫か?」
「まあ、なんとか」
「わりーな」

その言葉には思わずフッと笑った。よく似た二人だ、と意識を失った桑原を見た。
すると蔵馬が現れ、目を丸くしたあと、が引きずっていた少年を抱え、幽助が引きずっていた一人も抱えた。

「重い、ですね…」
「意識ないからね」

なんとか全員を桑原の家に運びきると、意識を取り戻した桑原の友人から蔵馬が事情を聞きだしていた。
が運んだ黄色いパーカーの少年はどうやら桑原を襲った人物らしい。桑原らしいと言えば桑原らしい、とは小さく笑った。

「災難だったね」

彼等の話を聞いたあと、蔵馬は花を取りだした。ぱたりと再び意識を失った。

「何?それ」

が首を傾げて尋ねると、記憶を失くすための花だと答えた。色々な花があるんだな、と感心しているに幽助が口を開いた。

、なんでおめえ人間に特殊な能力があることに驚かねーわけ?」
「ああ、玄海さんの所にいるときに何人か来てたから」

幽助が玄海へ視線を向けると、肯定するように頷いた。

、ここからはお前さんにも力を貸してもらうよ」

苦笑を浮かべて、ええ、と答えた。

「乗りかかった船、ってやつですかね」




突然の再会はトラブルの始まり







UP 04/03/14