突然目の前に現れた男に、全員が驚いた。

「まさか」
「ゆう、すけ」
「一体」

飛影と蔵馬は信じられないものを見るような顔だ。

「わりー、わりー、遅れちまってよ」

けろりと言う幽助に、は瞬きした。

「浦飯ぃ!お前、確かに心臓止まってたぞぉ!?」

それにそれ妖気じゃねえか、と桑原の言葉に幽助も、そうらしいな、と頷いた。

「まだ心臓はとまってんだけどよ」

自分でも状況がわかっていないらしい。蔵馬と飛影が笑い出した。

「くくっ、はははっ」
「ふふっ、ははは」

へへ、と幽助が笑った。

「心配ない。心臓のかわりに、核が働いているはずだ」

一体何だそれはと言うような顔で桑原が問うた。魔族の心臓だと説明したのはコエンマだった。

「つまりだ。俺の遠いご先祖様が妖怪で。その血が、俺を甦らせてくれたんだとよ」
「な、なんだとお!」

ぎょっと桑原が驚いたように見た。仙水も驚いたように幽助を見た。

「まさか魔族だったとはな。つくづくわからん奴だ」

飛影は笑った。それに幽助は同意した。

「本当だよなー。俺自身あんま実感ねえけどよ。見たところ全然かわってねーし。ま、とにかく決着がつけられるってわけだ。仙水、待たせたな。続きやろうぜ」

ちょっと待て、と飛影が止めた。

「気が変った。奴とサシでやりたくなった」
「いや、俺がやる」

蔵馬が告げた。二人の妖気が戻っている。は目を丸くして、二人を交互に見た。いや、前以上の力か。

「どうしたんだ、おめえら」

自分が死んでいる間に何があったのかと、桑原を見た。まるで数年特訓していたようだ。幽助は首を傾げた。

「きひひ。まてい、俺が先だ!今なら勝てそうな気がするぜい!」
「錯覚だ。バカめ」

桑原の言葉に、飛影がつっこんだ。

「もういっぺん言ってみろ!」
「バカめ」

ああ、何度か見た光景だ。はぼんやりと思った。

「うらめしくん」

が小さく呼んだ。

「おう」

ニッと笑って見せた相手に、は生きているのだと実感した。ゆっくり立ち上がった。

「おかえり」

ああ、と頷いて、ふとの傷に気付いた。

「おめえ、なんでそんな怪我してんだ?」

自身の体を見た。血だらけの服は、あちこち穴だらけだ。見えている肌には擦り傷や切り傷が見えた。は苦笑した。

「だって、戦ってたし」
「おめえが?」
「うん」
「おめえ、やっぱつえーんだな」
「そりゃあ、護身術程度はできるけどね」

懐かしい言葉に、全員が吹き出した。

「ぷっ」
「ふっ」
「くくッ」
「ははは、そうだったな」

先ほどまで死闘を繰り広げていたとは思えないほど、和やかな雰囲気だ。幸せだ。は思った。

「でも、たまには私が倒しに行ってくる、って言うのもいいね」

他の三人が、仙水と勝負する、と言ったのに倣ってみせたに、全員が笑った。他の三人と違い、そんな気はない。だが、こんな会話も楽しい。昔では知りえなかったことだ。幸せだ。



何気ない会話の幸せ



UP 04/05/14