「穴を開けたいんだよ」

突然父に言われた言葉に、は首を傾げた。そして、手にしていた折り紙を見た。幼い娘の仕草を見て笑んだ。

「紙にではないよ」

不思議そうに首を傾げたに、左京は続けた。

「大きな穴だ」
「おおきなあな?」

そっとを抱き上げ膝の上に乗せた。

「魔界という世界には、妖怪がたくさんいる。だが、そこの妖怪たちは滅多に人間界に来れない」

ふーん、と相槌を打つが理解しているとはとても思えないが、左京は、強ければ強いほどね、と付け足した。

「だから、穴を開けたいんだ。強い妖怪でも人間界に来れるような穴をね」

左京の言葉に、幼い娘音は一生懸命理解しようと頭を働かせていた。その姿に思わず笑みをこぼした。

「おとうさんのゆめ?」

の質問に、左京は頷いた。

「ああ、そうだな」

にっこりと笑って、わかった、と話を理解したと伝えた。

はね、おとうさんがしあわせなのが、ゆめ!」

えへへと笑った娘の言葉に左京は驚いたように目を見開いた。なんて欲のない夢だ、とつっこむこともなく、左京は笑んだ。



しあわせ



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