[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
【チェス】
「はい、チェックメイト」
「あ~!もう一回!ね、ルディア。あと、もう一回だけ!」
悔しそうにキラが人差し指を立てて次のゲームをねだる。
ボードの反対側に座るルディアは苦笑いを浮かべて、うーん、と唸った。
「キラ、俺にも勝てないのにルディアには勝てないと思うんだが・・・」
「そういえばキラってアスランにチェスで勝った事ってなかったっけ?」
「なっ!そんな事ない!アスランに勝った事だってあるよ!」
俺の言葉にそういえば、というルディアにキラはムッとして、声をあげた。
俺はルディアにチェスで勝った事がない。いつもどんなに考えていてもルディアが一枚も二枚も上手だ。
キラも下手じゃないけど、俺やルディアには勝てない。
「勝った事、あったっけ・・・?」
「あったか?」
「っ・・・!一回だけだけど、ある!」
一回だけって・・・
思わず呆れた眼でキラを見ると、ルディアも一瞬呆れた眼をすると苦笑いを浮かべた。
「まあまあ、キラ。キラは優しくて素直だからね。チェスなんて捻くれてる人ほど勝てるんだから。」
ルディアの言葉に今度は俺が少しムッとした。
「ルディア、それって俺がひねくれてるって事か?」
「えっ、あ、別にそう言う意味じゃ・・・」
慌ててフォローしようとするルディアにキラが笑った。
「アスランの場合はあってるかもしんない!」
「キ、キラ!」
笑うキラを睨んだ。
負けてる奴に笑われたくない・・・
大体チェスは頭脳ゲームじゃないか。
「キラが単純だから弱いだけだろ」
「なっ!今の聞いた、ルディア?!」
アスランがひどい、とドサクサにまぎれてルディアにキラが抱きついた。
母親に甘える子供のようにルディアに腕を巻きつけるキラ。
ルディアは笑いを耐えようとして苦笑いを浮かべていた。
「ま、まあ、アスラン。今のはちょっと言い過ぎじゃない?」
「ルディア!笑いながら言ってもフォローになんないよ!」
頬を膨らませてキラが言うと、ごめん、と笑い出した。
確かにあんなにあからさまに笑ってるのがわかるとフォローになってないとも思う。
すると突然電話が鳴った。やんわりとキラの腕を解いてルディアが立ち上がって電話に出る。
「何で、ルディアにチェスで勝てないんだろ?」
「ルディアが頭がいいからだろ」
「でも僕やアスランだってルディアと同い年なのにさ。ルディアはお母さん達にも勝てるんだよ?」
チェスボードを直しながらキラがぼやく。
確かにルディアはとても頭がよくて学校でも一番ばかり取っている。
母さん達との難しい話にも平気で入ってる時もある。
「キラ」
電話で話し終わったルディアがキラを呆れたような顔で見た。
「今日、早く帰るように言われてたんだって?」
「え、あ!そうだった!」
慌てて立ち上がったキラが色々荷物をまとめ始めた。
「お母さん怒ってた?」
「早く帰らないと大変な事になるかもしれないくらい。」
「え~!」
クスクスと笑うルディアの顔を見ればからかってるのは一目瞭然だ。
でもキラは更に急いで荷物を詰めるとバタバタ出て行った。
「またね!ルディア!アスラン!」
「ちゃんと宿題おわらせなさいよー?」
最後の釘をさしてルディアはバタンと音を立ててしまったドアを見て笑った。
「まったく、キラは忘れっぽいね」
フフッと笑ったルディアを見ると手に色々書いてある紙。
「アイツ・・・」
「折角やったのに忘れちゃって。明日学校始まる前に届けないとね」
二人でやれやれと笑った。
キラの物をテーブルに置くと俺の隣に座って笑った。
「こんな風に忘れ物してる間は、勝てないだろうね」
「忘れ物しないのに俺は負けるけどな」
「私のが捻くれてるからね」
何だよそれ、と呆れた顔を見せると、クスクスと笑るルディア。
ルディアが捻くれてるって言ったら世の中どうなんだ。
思わず突っ込みたくなるが、ふ、と笑ってルディアに問うた。
「もう一回くらいチェスをやる気は?」
俺の問いにクスリと笑みを零すとルディアは頷いた。
「もう一回くらいならいいかな」
チェスの駒を全部直しながら俺は今までのルディアとのゲームを思い返していて意気込んだ。
今日こそ君に勝ってみせる。
UP 04/08/05