【フェリス】
「ラミアス大尉!」
「バジルール少尉」
アークエンジェルに残っていた軍人達がマリュー・ラミアスへ駆け寄る。
その間には、桔梗色から灰色に変わった機体、フェリスのコックピットから急いで出た。
キラ・・・・・・
知らなかったとはいえ、コロニーに穴をあけてしまったキラはショックを受けているかもしれない。早く傍に行きたいのにワイヤーはゆっくりと降りていく為、下まで待ちきれず途中で手を離して飛び降りた。そんなと少し遅れてワイヤーで降りている途中のキラを見ると一人の軍人が呟いた。
「おいおい・・・まだ子供じゃねーか・・・」
そんな軍人を無視し、キラにガバッと抱きつく。
「キラッ・・・・・・!」
「・・・・・・」
その時、の耳にキィンと不思議な耳鳴りが聞こえた。
何・・・?この音は・・・・・・
「へぇー。コイツは驚いたな」
声のした方へ顔を向けるとは目を見開いた。
「地球軍第七機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく」
それに続いてマリューと先程マリューに駆け寄ったショートヘアの女、ナタル・バジルールも挨拶をした。あれは?と指されたキラ達をマリューはヘリオポリスにいた民間人だと説明した。抱きついていたは、今度はキラと寄り添うように立っていた。そしてキュッと不安を和らげるにキラの袖を掴む。
『エンデュミオンの鷹』がどうして此処に・・・
フラガ達は観察するようにとキラを見ると、二人の前へ歩いてきた。二人の傍に立っていたサイやトール達にも緊張が走る。キラはの少し前に立ち、を隠すようにした。フラガはジッとそんなキラとを見つめ、問うた。
「君、コーディネーターだろ?」
フラガの問いに、はい、とキラが頷くと、軍人達がざわめく。そして、いくつもの銃口が向けられる。その行動にトールは庇うように前に出ようとしたが、しかし、はそれを止めた。
「銃を下ろしてください」
今度はキラを庇うように一歩前に出る。未だに片手はキラの服を掴んでいたが、は真っ直ぐとマリュー達の目を見た。
「ヘリオポリスは中立国です。平和を望んでこのコロニーに来るコーディネーターも少なくはありません。私達には貴方達に撃たれる理由がありません。もっとも貴方達がコーディネーターの全てが敵だというのならば別ですが。撃つなら無抵抗な人間を殺した最低な人間に成り下がる事になりますね」
挑発的な言葉を言いながらも、震えそうになる手を一生懸命抑えるようにキラの服を強く握る。
「銃を下ろしなさい」
の言葉を聞くと、マリューが命じた。するとナタルは驚いたように声を上げた。
「ラミアス大尉!コレは、一体―――」
「彼女の言う通り、此処は中立国のコロニー。彼女達のようにコーディネーターが居ても不思議じゃない。でもね、さん。私達は別にコーディネーター全てが悪いとは言わないわ。それだけはわかって欲しいの」
少し悲しそうな顔でマリューが告げると、全ての銃口は此方をむいていなかった。
「キラ」
しばらく艦の中にいる事になったキラ達は小さな部屋に案内される事になった。歩きながらは不安そうなキラを見る。
「ん・・・?」
「大丈夫?」
心配そうな顔にキラは軽く微笑む。しかし、その笑みは力の無いもので、疲れていることがすぐにわかった。
「ごめんね、キラ」
「が謝る事なんか何もないでしょ?」
それでもは同じ言葉を繰り返した。
これからキラは苦しむ事になるかもしれない。でも、私が守るから・・・
『フェリス』とは至福や幸運という意味を持つ。
UP 04/03/05