俺は彼女を知っている。

プラント最強で最高の兵器だと呼ばれた彼女を。



【君に再び出会う】



「ハイネ・ヴェステンフルス」

男の声がして振り返ると俺は自分の目を疑った。

「彼女がだ」
「初めまして、です」

フワリと笑みを浮かべて敬礼した相手を凝視する。

紅碧の髪。
ただ違うのは綺麗な青緑の瞳が金色な事だけで。
昔見た笑顔と変わらない。

「ハイネ・ヴェステンフルス、です。よろしく」
「彼女も君と同じフェイスだ。仲良くしてやってくれ」

それじゃあ、と男は別の用事を済ませに行った。

「どうかされました?」
「え、あ・・・いや・・・」

あまりにも昔憧れた人に似ている為俺は困った。

『零の暗号』と呼ばれた彼女にそっくりな女。
本人だと俺は思った。
だけど、昔のような冷たい感じがない。
何故?

「・・・ヴェステンフルス隊長?」
「・・・・・・そんな堅苦しい呼び方はやめよう。ハイネでいいよ」

そうですか?とすんなりと受け入れた彼女は、じゃあハイネさん、とまた笑った。

「さん、もいらないよ」
「じゃあ、私もでお願いしますね?」
「敬語も、なし」

俺の言葉に彼女はキョトンとしてからクスクス笑った。

「ハイネは結構細かいのね」


『君は結構細かいね』


ああ、彼女だ。

でも彼女の目は俺を知っているとは思えなくて、少し胸が痛む。

「細かいかぁ?せっかく一緒になった仲間なんだから他人行儀なのは嫌だろ」

そうね、と軍人らしくない笑顔を向ける。

「軍に入る前は、何をしてたんだ?」

本当は凄く知りたいのに素朴な疑問に見せる問い方をする。
すると彼女は困った様に笑った。

「入院してました」

の返事はそれだけだた。
行きましょう、と言って俺に背を向けてシュミレーションルームへ向かう。
その後を追いかけるように俺も歩き出した。

結局俺は彼女が本物なのか別人なのか、決定的なものが無かった。


でも、彼女のオーラは変わらなくて。

でも、彼女の優しさは変わらなくて。

でも、彼女の美しさは変わらなくて。

でも、彼女の魅力は変わらなくて。


俺は一人笑みを浮かべた。


君にまた会えるなんて、夢にも思わなかったから。




UP 09/09/05