【平和の終わり】
「!」
コックピットを開けるとキラの声が聞こえた。心配しているのがわかる声に苦笑が零れる。跪く形で止まった機体から降りるとキラが駆け寄った。
「・・・!」
「キラ」
「怪我は・・・?!」
の肩を掴んで不安そうな声で問うキラに、大丈夫、と不安を和らげるように微笑む。ふとミリィを見ると傍に作業服の人間が眠っている事に気付いた。
さっきの・・・・・・
ゆっくりと近づくとまだ眠っていた。明らかに地球軍の人間だとわかる。その事実にまた溜息が零れそうになる。
「ん・・・」
ゆっくりと開かれた目に、気がつきました?とが問うた。そして、何が起きたのかをミリアリアが説明すると、ストライクに未だに興味を持っているトール達へ向いた。バッと銃を構えると、トール達を威嚇する。離れなさい、と肩を庇いながら言う。なんて滅茶苦茶な人だろう、と正直は思った。でも彼女の行動は軍人としてある意味正しい。
「やめてください!彼らなんですよ?!気絶した貴方を運んでくれたのは!」
キラが怒鳴ると、銃口がキラに向けられた。その事には、体が思わず反応しそうになるが、抑えた。そして、命令通り、一列に並ぶ。トール達の顔はとっても不満そうだった。は、キラと寄り添うように立って、自分の行動を抑えるためにキラの袖を握る。
「一人ずつ名前を」
銃を構えたまま問われた質問に順番に答えていく。
「サイ・アーガイル」
「カズイ・バスカーク」
「トール・ケーニヒ」
「ミリアリア・ハウ」
「キラ・ヤマト・・・」
銃口を向けられるのはあまりいい気分じゃない。は、思わず冷たい声で答えてしまった。
「・」
の声音に驚いたらしい彼女は、マリュー・ラミアス、と名乗った。
「申し訳無いけれど、あなた達をここで解散させるわけにはいかなくなりました」
本当に申し訳ないと思っているんだろうか、と皆心の中で毒づく。軍の重要機密を見てしまった、とマリューが言ったが、もちろん納得する訳がない。その言葉にとキラ以外全員が不満の声を上げる。
トール達はナチュラルだからまだいい・・・でも、コーディネーターのキラと私は危ないかもしれない。
不安がの中に広がると、トール達のブーイングにマリューが怒鳴った。
「黙りなさい!何も知らない子供が!中立だとか、関係ない、と言っていればまだ無関係でいられる・・・まさか本当にそう思っている訳じゃないでしょう?あなた方は軍の重要機密を見た。その時点でただの民間人ではなくなる。それが今のあなた方の現状です」
その中立での平和を望んでここに居る者達の思いはどうなる?
ナチュラルもコーディネーターも何でもない、と信じる者は?
戦争をする者は、自分達の信じる事を戦いで示しているだけ。
その戦いが無意味だと思っている者達を巻き込んで、一体何がしたい?
の顔が悲しく歪んだ。
そして、がキィンという耳鳴りが聞こえた後現れたシグーの破壊と共に、コロニーに穴が開いた。
運命の歯車が惨酷な未来へ向かい始める。
UP 02/21/05