【本能】
ユニウスセブンが軌道からずれた。このまま行けば地球に衝突するだろう。信じられない。信じたくない報告。無残にも散ってしまった人々の墓場を壊さなければいけない。
何故、ユニウスセブンが動き出した?隕石等の自然が原因?それともそれを意図した人間が居た?
思わず唇を噛んだ。久しぶりにちゃんとパイロットスーツを着る。訓練の時は一度も着なかったスーツ。本物の戦争に行く訳じゃなかったから必要なかった。でも今は違う。今度は宇宙で、もしかしたら本当の戦闘になるかもしれない。
ギュッと閉じていた目を開ける。皆が楽しそうに笑う一枚の写真を飾ったロッカーを閉める。
「?」
再び閉じた目を開ける。
「なぁに?緊張してるの?らしくない」
「ルナ・・・」
緊張しているのはどっちよ。ルナの声音はいつもより強張ってる。彼女らしくない。
「まさか」
少しおどけたように言った私の言葉にルナは目を丸くした。性格には言葉じゃなくて、声音かもしれないけど。
「簡単な作業でしょ」
体が。本能が告げる。
「緊張なんか―――」
前に似た経験をしたと。
「―――するわけないじゃない」
そして、また、始まると。
「ただジュール隊のサポート役でユニウスセブンを砕くだけなんだから」
?とルナが不思議そうに私を呼ぶ。少し心配そうに私を呼んだルナに微笑む。
「私はもう行くわね。ルナ、スーツのジッパーがちゃんと上がってないわよ」
直しなさい、と言って部屋を出る。
そして誰よりも早くに機体に乗る。慌しく機体の外では皆が動き回っている。私は機体の中で静かに出番を待つ。アーサーの声が響いて、メイリンの声が続く。画面の端に見慣れない人。
「何で・・・?」
私を懐かしそうに、悲しそうに呼んだ人。メイリンに問おうとするとそれよりも早く返事が返ってきた。
『人数が多い方がいいから、だそうよ』
タリアの言葉に、でも、と呟く。
『議長の許可も頂いたわ』
「・・・そうですか」
わからない。ギルの考えている事が。
『・・・』
考えたくない。
『もう、やめよう・・・』
考えたくないのに。
『すまなかった・・・』
彼は前の私を知っている。
説明を聞くと彼は機体の中へ入っていった。それを見た後、私は目を閉じた。更にメイリンとシンのやり取りが聞こえてきて目を開けた。次々と浮かび上がるメッセージと指示。ジュール隊とザフトの機体が交戦中とのこと。
一体何処の誰がザフトとの機体を使ってユニウスセブンを動かしているのか。
せっかく一度収まった争いを再びはじめようとしているのか。
どうしようもなく怒りが込み上げる。するとルナの声が通信から入ってきた。
『状況が変わってきましたね』
やめます?と少しからかうように言うルナ。通信相手はあの彼か。
『馬鹿にするな』
少し怒ったように返した声の後にメイリンが私へ向けて準備が出来た事を告げる。了解、と頷くと背筋を伸ばした。
「フォーリーフ、・出撃する!」
UP 07/23/05