デブリベルトの残骸の中で見つけたもの。
コーディネーターとナチュラルの亀裂を深くしてしまったもの。
ユニウスセブン。
【彼女の怒声】
艦長たちに言われてデブリベルトの中を探索していた僕達が見つけたものは信じがたい物だった。
「ユニウスセブン・・・?」
僕は慌てて通信をつけて報告した。そしてバジルール中尉が水を詮索する事になった。辺りの光景に僕は息を呑んだ。
死んだ時のままの姿で、浮遊する母親と子供。
惨酷な光景。
「・・・?」
通信機に話し掛けても答えが返ってこなかった。いつものならすぐに答えてくれるのに。
しばらくして僕達はアークエンジェルに戻る事になった。フェリスから降りたの表情はいつもと違って穏やかじゃない。あんな光景を見たら当たり前なのかもしれないけど・・・
「?」
「大丈夫?キラ」
声を掛けると微笑んでくれた。
「僕は、大丈夫、だけど・・・」
君は?と問う前には、なら良かった、と笑ってブリッジへ行くようにと僕を促した。ブリッジにつくと早速水の話。
「あそこの水を!?本気ですか!?」
正気なのか、というように僕は問うた。
「あそこには一億トン近い水が凍ってるんだ」
フラガ大尉の言葉に僕はギュッと拳を握った。
「でも・・・・・・!」
必死に他の事を考えようとしても僕の頭には浮かばない。とにかくあそこに触れなくてすむように必死だった。何人も亡くなった場所なのに、と続けようとした僕の言葉は遮られた。
「ふざけないで・・・」
突然口を開いたに全員が目を向けた。
「・・・?」
いつも穏やかで微笑みを浮かべてるの表情はいつもとは全く逆で。
「あそこがどんなところだか、わかっているんですか?」
とても冷たくて、険しい表情でフラガ大尉達を睨んでる。
「ユニウスセブンがどんなところだかわかっているんですか・・・!?」
わかっているさ、とフラガ大尉は頷いた。
「俺達だって好き好んであそこに入ろうとするわけじゃない」
生きるためには、と言うフラガ大尉の言葉は正しいのかもしれない。死なない為に僕達はあそこの水が必要で。仕方なく入らなきゃいけないんだ。
だけど、やっぱり、納得できない。
「何の武器も持たないで・・・ただ生きるために作物を育てようとした・・・!」
初めて見るほどに怒りを露にするの叫びに全員が目を見開いた。
「苦労して作り上げた『自由』の象徴を許さず、生きることも許さず・・・!罪も無く殺されていった彼等に静かな眠りさえも貴様等は許さないのか?!」
の目には怒りと悲しみが映っていて。うっすらと浮かんだ涙に僕は心が引き裂かれそうなくらいに痛みを感じた。
『血のバレンタイン』
そう呼ばれたユニウスセブンの破壊の日はきっと沢山のコーディネーター達を怒らせて。そして今の醜い争いが続いているんだ。
『憎しみは何も生まないのに。』
そう悲しそうな笑みを浮かべて言ったを思い出した。恨んでいないといっていたは、本当は恨んでいるんだろうか?多くのコーディネーターを殺した地球軍を。多くのコーディネーターを殺したナチュラルを。
「ただ、コーディネーターだという理由だけで、殺された人達を静かに眠らせることも許さないの・・・!?」
貴様、とバジルール中尉がを睨んだ。
「わかってるさ、そんな事!だけどな!」
の言葉にフラガ大尉が返した。
「俺達は生きてるんだ!生きなきゃなんねーんだ!死んだ奴等から貰うしか手段がないんだよ!」
怒鳴るように返したフラガ大尉に艦長は困ったような表情を浮かべていた。を見ると一瞬の顔から感情が消えた。
「自分勝手だな」
ふ、と鼻で笑ったの顔には冷たい、あざ笑うような微笑み。
「命という大切な物を奪った後は、水か?」
冷たい言葉に僕は目を大きく見開いた。まさか、あの穏やかながこんな事を言うなんて・・・
「あそこの水がそんなに欲しいなら自分で行く事だな」
「!」
僕は、踵を返してブリッジを出て行こうとしたを呼んだ。するとは顔だけを振り返って再び冷笑を浮かべた。
「こんな作業に私は手を貸すつもりはない」
UP 10/15/05