【KASA】
アルテミスに入ると兵士達によって食堂へ皆集められた。がキラの隣に座っていると食堂に白い軍服を着た男達が入ってきた。自信に溢れたような表情には彼等の目的を瞬時に悟った。
「この艦にある2機のMSのパイロットと技術者は、誰かね?」
わかりやすい、とは思いながらも表情を変えなかった。アークエンジェルのクルー達は少し険しい表情で何も言わなかった。居るだろう、と大声で言う男にキラが立ち上がろうとするがマードックが止める。そして、何故艦長たちに聞かないのか、とノイマンが問うと男達は顔を歪ませた。話を逸らそうとするノイマンの努力も空しく、男はミリアリアの腕を掴んだ。
「女性がパイロット、ということもないとは思うが。この艦は艦長も女性だという事だしな」
「いった・・・!」
痛みを訴えたミリアリアには顔を一瞬歪ませた。立ち上がろうとしたキラにが腕を引っ張り、とめた。
バシャッ
「なっ!」
手元にあったコップに入っていた水をはミリアリアの腕を掴んでいた男に掛けた。驚いた男はの望みどおりミリアリアの腕を放した。
「ああ、すいません」
苦笑を浮かべてが謝る。
「手が滑ってしまって」
「き、貴様・・・!」
濡れてしまった軍服に怒る男はの腕を掴んだ。無理矢理立ち上がらされたは相変わらず苦笑を浮かべたまま男に言った。
「女性には優しくするべきでは?」
「民間人の癖に随分偉そうな口をするな?」
偉そうなのはどっちだ、と心の中で毒づく。
「生憎馬鹿な軍人が嫌いなので」
「なっ・・・!」
挑発するの思惑通り男は怒り、掴んでいる腕に力を入れた。その強さに顔が歪みそうになるが、耐えた。
「こんな所で女相手に潰す時間があるなら、外の心配をした方がいいのではないですか?」
「ふん。この『アルテミスの傘』を突破できる物は何一つないのだよ、お嬢さん」
自慢気にいう男には皮肉な笑みを浮かべた。
「これだから愚かな軍人は嫌いだ。本気でザフトが此処を『突破できない』から避けていたと思うか?『突破する必要ない』から攻撃されていないとは思わないか?こんな『傘』一つでザフトが諦める訳がないだろう」
妖艶な笑みを浮かべたを男が睨んだ。
「貴様、何者だ?」
「偶然この艦に乗り合わせた女ですよ」
「ッふざけるな!」
ガッとの腕を捻ろうとした男に我慢が出来なくなったキラが立ち上がった。
「いい加減にして下さい!パイロットは僕です!」
自分で白状してしまったキラにマードックやノイマンが頭を抱えた。は、ちっ、と顔を歪ませた。
「くく。坊主、この女を庇おうと思うのは判るがな。あのMSは貴様のようなガキが扱える代物ではない」
を突き放すとキラに近づいた。しかしその時に大きな声が響く。
「本当よ!キラが言ってる事は!」
その声には顔をあからさまに歪めた。トールやミリアリア達も驚いた様にフレイを見る。
「貴様等、いい加減に・・・!」
「嘘じゃないわ!だって、その子達、コーディネーターだもの!」
「フレイ・・・!」
何て事を言うんだ、と皆が目を丸くした。そこで男は嬉しそうに笑った。
「ほう。コーディネーターか」
そして再びの腕を掴み引っ張った。
「道理でザフトに詳しいはずだ」
ふ、と笑って男は顔を近づけた。
「裏切り者のコーディネーターか」
「私はザフトの人間でも地球連合軍の人間でもないですが」
鼻を鳴らした男はキラとを連れて行くように言った。しかし、は食堂を離れる前に企むような笑みを浮かべた。
「気をつけた方がいい。『傘』は雨が降らなければ意味がないからね」
UP 06/29/05