「キラ」
傷だらけの身体を抱き上げようとしたが、体がふらついた。ぐらりと揺れた視界に、は舌打ちした。ここのところ立て続けな上に、たった今二人連続だからか、と自身の体力の低下の原因に検討つけた。それでも、ここにいるわけにはいかない。
ぐっと肩に意識のない体をひきあげ、ゆっくりと歩き出した。
【すべてかわる】
「お久しぶりです」
マルキオの言葉には苦笑した。
「実際に会うのは、久しぶりですね」
通信している相手だと久しぶりだという感覚はなかなかない、とは思った。
「彼が、シードを持つ者、ですか?」
閉じられたままの目に、頷いて見せた。
「ああ」
は、目を伏せた。
「キラをお願いします」
「もちろんです」
安心させるようにいう相手に苦笑した。ああ、と頷いた。
「その前に、貴方の治療もしましょう」
「無用だ」
きっぱりと断れば、困ったようにを見た。
「すいません。気がたっているみたいで」
「お疲れなのでしょう」
疲れている場合ではないのだ。は、いや、と首を振った。
「・・・先日貴方が送られた少年には会いますか?」
「いや、私もすぐにアークエンジェルに戻る」
「わかりました」
は立ちあがって、トールの眠る部屋へ入ったあと、キラの眠る部屋へと足を進めた。再度部屋から出てきたに、マルキオはそっと手を取った。
「神の加護があらんことを」
ふっとは笑った。
「!」
突然飛びかかってきた体を受け止めた。
「ラクス」
「お久しぶりですわ」
そうだな、と頷いたに抱きつくと、ラクスは真面目な表情へと変わった。
「もうすぐ、ですわ」
主語のない言葉に、は目を閉じた。
「そうか」
そして、そっとラクスの体を離した。
「もう、いってしまうんですの?」
「ああ」
少しすねたような様子に苦笑した。
「ラクス、マルキオ導師。あとは頼んだ」
がそういうと、二人は頷いた。もちろん、と。
「時が、動き出す」
マルキオの言葉に、は頷いた。
「ああ、もうすぐ世界は変わる」
期は熟した。
UP 06/15/14