【心の中で謝罪を繰り返す】
「!」
桃色の髪をした少女が私に抱きついた。
「お会いしたかったんですのよ」
「私もですよ、ラクス嬢」
「まあ、。ラクスと呼んで下さいと何度申し上げればよろしいのですか?」
「ああ。失礼」
ニコリと笑みを浮かべると彼女はボディーガード達に部屋の外へ出て行くよう指示した。
「いい加減離れてくれませんか、ミーア嬢」
「あ、ひどーい。これでも頑張って練習してたんですよ?」
そう、と微笑むとミーアは嬉しそうに笑った。
ミーア・キャンベル。ラクス・クラインの替え玉。替え玉としての彼女の生活は常に『ラクス・クライン』で通っている。
「ねえ、」
「何でしょうか?」
「もう、その敬語やめてってば!」
「・・・なぁに?」
妹のように私に懐いてくれた彼女はソファの上で私の隣に座った。
「は、軍に入る前に何をしていたの?」
何も知らない彼女は無邪気に訊く。
「んー。なんだろうね?」
クスッと笑った私に、教えてよー、とミーアはごねた。簡単に騙されるミーアに、私もよく嘘が上手くなったなぁ、なんて思う。否。嘘は前から上手かった気がする。・・・記憶はないけれど。
「じゃあ、小さい頃のってどんなだったの?」
「あんまり変わらないと思うけど」
「がすっごく元気で明るいのなんか想像つかないなー」
クスクスと笑ったミーアに、何それ、とムッとして見せた。
「じゃあ、ミーアはどんな子供だったの?」
「私はねー」
ニコニコと小さい頃の話を始めたミーアにふと思った。
私が『ラクス・クライン』に似ていたとしたら、私はミーアのように替え玉になっていたんだろうか。くだらない考えかもしれない。でも、そのほうが良かったのかもしれない。そうすればミーアはミーアとしての人生を送れた。自分が誰かもわからない私は、他の人間になればよかった。
「それでね―――」
「ミーア」
「・・・なあに?」
一瞬目を丸くしてから、ミーアは首をかしげて私を見た。
「ミーアは、辛くない?」
「何の話?」
「・・・ううん」
辛くても、言える訳がない。
「何でもない」
貴方に辛い思いをさせている私を許して。
「ごめんね、ミーア」
貴方を替え玉にする事で楽をする私を許して。
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