「つくづく君は拾い物が好きなようだな」
嫌味を言うバジルール少尉を無視してキラが持ってきた救命ポッドが開いた。
「あら?あらあら?」
中から出てきた桃色の髪を持つ知人に私は驚く以外できなかった。
【桃色之歌姫】
「ここはザフトの艦ではありませんの?」
なんて呑気な・・・・・・
相変わらずどこか抜けている彼女にタンッと床を蹴って無重力を利用して近づく。周りは唖然としていて言葉も出ないようだった。
「ラクス嬢・・・」
「まあ!・・・!」
不安定な無重力で一生懸命真っ直ぐ立とうとするラクスを支えるように手を伸ばした。ラクスは嬉しそうに私に抱きついた。
「本当にですの・・・?!・・・!」
また会えて嬉しい、と喜ぶラクスに私は嬉しくなった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「で、そのお嬢ちゃんは、嬢ちゃんのお友達かい?」
「ややこしい言い方ですね」
思わず突っ込むけど、ラクスが、はい、と嬉しそうに答えた。
「とは小さい頃、遊んでましたの」
「遊んでた?」
「さんと・・・?」
はい、と嬉しそうに答えるラクス。
「けれど、大分前に引っ越してしまって・・・今日ようやく久しぶりに会えたんですの」
「へ〜」
フラガさんが、少し探るような眼で私とラクスを見た。
「で、君の名前は?」
「ラクス・クラインですわ」
「クライン?クラインって言ったら・・・」
本当に正直な彼女に溜息が出そうになる。自分の父親の正体まで明かした彼女を恨みたくなった。仮にもこの艦は地球連合軍の物なのだから。いくら彼女が軍とは関係ないとはいえ、下手をすればとんでもない仕打ちを受ける可能性だってあるのに。思わず険しい顔になる。
「いくら彼女がクライン議長の娘だからと言って、彼女自身がザフト軍にいる訳じゃありません」
だけどな、と反論しようとしたフラガさんを遮ったラミアスさんはラクスを『人質』ではなく『保護』すると告げた。その言葉に少しホッとして、ありがとうございます、と微笑みを浮かべた。
「でも」
微笑みを消した。
「彼女に何かあったら・・・」
悲しそうな視線を送るラクスに気付いてそこで言葉を切った。冷たい眼を白い軍服に向けた。
「腕の一本ぐらいは覚悟してもらいましょう」
平和を望む優しい桃色の歌姫を傷付ける事は許さない。
UP 07/17/05