「レイのバカヤローーーーーー!」
ズルッと目の前に頬杖をついていたレイの頭が手から滑り落ちた。
【お母さん】
珍しく面白い反応をするレイに私は問い掛けた。
「何かしたの?レイ」
「いや・・・・・・」
否定の言葉をしつつも何だか気まずそうな顔のレイに首を傾げた。
珍しいなぁ、レイがルナの叫び声で気まずそうなのって。
何かしたのかな?
「コーヒーもう一杯飲む?」
「いや、いい」
はあ、と溜息を吐いたレイに問うた。
「レイ、ルナに何かしたの?」
「・・・・・・」
黙られると困るんだけどなぁ。
レイの沈黙の場合は思いつかない事か言い辛い事。
「またルナに演習で勝って逆切れされてるとか?」
「いや・・・」
「じゃあ、レイがルナの見せ所を取っちゃったとか?」
「いや・・・」
うーん、と唸りながら考えられる可能性を色々探した。
「じゃあ、ルナがついにレイの優秀さにキレたとか?」
ポロッと口から出た言葉の後に後ろから、〜?と低い声が聞こえた。
「何それ!、アタシの事そんな風に考えてたわけ!?」
「うわっ、ルナ!?」
振り返るとルナが凄い形相で私達を見ていた。
慌てて、違うよ、と言うが、しんじらんなーい、とヒステリックな叫びが耳を襲った。
「酷すぎッ!までそんな事言うなんて!今回はそんな事じゃないの!」
「わ、わかったから。ルナ、落ち着こう!」
宥めるように笑って見せるけど、ルナは、ふー、と猫の様に威嚇した。
レイに目をやると、困ったような顔で私を見た。
「とりあえず、座りましょ。ね?」
渋々といった顔でルナが座ると私はお茶を出した。
「で?ルナは、どうしてそんなに怒ってるの?」
こいつに聞いてよ、とまだ怒っている様子のルナが言うので、私はレイを見た。
すると疲れたようにレイが呟いた。
「お前、まだ怒ってるのか・・・」
「当たり前でしょう!?」
また声を大きくしてレイを睨むルナに、まあまあ、と声を掛けながらレイに説明を求めた。
「レイ?」
「・・・・・・」
何も答えないレイを不思議に思った。
今回は、レイが悪いんだろうか?
でも、レイなら自分が悪い時はきちんと謝るはず。
「レイ―――」
「あ〜!だ!」
もう一度問おうとした瞬間明るい声が聞こえてきた。
顔を見なくてもすぐにわかる。
「ヴィーノ」
「、俺にもお茶いれて!お願い!」
陽気さのせいか幼く見えるヴィーノのお願いを言われると私は思わず動いてしまう。
わかった、と微笑んでお茶を新しくいれ始める。
そして、ヴィーノにお茶を差し出すと、もう一度話を戻した。
「で、レイ。ルナはどうして怒ってるの?」
「それは・・・」
レイがまた言葉に詰まると、ヴィーノがお茶を飲んで笑った。
「そういえば、ルナマリアまだ怒ってたんだなぁ〜。レイが間違えてルナマリアのドリンク飲んじゃっただけなのに」
笑いながら言ったヴィーノに私は、はぁ?と間抜けな声をあげてしまった。
「まさか、ルナ・・・そんな事で怒ってたの?」
「なっ!そんな事じゃないわよ!レイったら全部飲んじゃったのよ!?」
「ちゃんと新しいのを買っただろう・・・・・・」
はあ、と溜息を吐いたレイにルナが、そう言う問題じゃない、と怒り出した。
っていうか、ルナ・・・ドリンク飲まれたくらいで、そんなに怒らなくても・・・
少し怒られるレイが哀れに思った。
ルナを宥めるように、ケーキでも食べに行こうか、と提案して見るとルナの表情が変わった。
行く、と嬉しそうに笑った彼女の機嫌が良くなったのがわかって一息吐いた。
少しだけ呆れと疲れを感じながらも可愛いルナに付き合って私はケーキ屋に行く事になった。
そして、また溜息を吐いた。
「ああいう所が、はお母さんみたいなんだよな。」
とまた言ったヴィーノの声は私は聞いていなくて。
その隣で溜息をつきながら、ああ、と返事するレイの姿も見なかった。
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