【シークレット・コンタクト】
「死にぞこないという言葉が似合うだろう?」
少し苦笑を浮かべた男の片目は何も映せなくなってしまった。
「・・・悪い」
「何故、貴方が謝る?」
微笑んだ相手から視線をそらした。
「アイシャを、守れなかった・・・」
「アイシャは、最期に笑っていた」
ギュッと拳を握った。悔しかった。悲しかった。
「・・・片目を失った」
モニター越しに、傷ついた目にそっと触れた。
「貴方が気にすることじゃない」
「でも・・・」
「生きているだけでも奇跡なんだよ」
優しすぎる眼差しから目を逸らした。しかし、やんわりと名を呼ばれ、モニターへと視線を向けた。
「感謝しているんだ。そんな顔をするな」
「・・・ああ、すまなかった」
わずかに口の端をあげながら謝ると、バルトフェルドも苦笑を浮かべた。
「やはり、君とは長い付き合いになりそうだな」
「予想通りだ、とでも言いたげだな」
「ああ」
頷いたバルトフェルドは笑った。
「君に初めて出会ったときから、そう思っていたよ」
「・・・考えたこともなかったな」
素直にいえば、そうか、と意外そうな声が返ってきた。
「虎の直感だ」
「なんだ、それは」
呆れたようにいえば、くくく、と相手は笑った。
「・・・傷は?」
「ほとんど治ってきている。心配ない」
安心させるようにいう相手に、本当だろうか、と若干疑いの眼差しを向けた。本当だ、と念を押すように告げられた。
「そんなことよりも、君にも無理をさせただろう」
「いや、私はなんともない」
そういうと、不満そうな視線が向けられた。ウソだろう、と言いたげな視線に苦笑した。
「もう熱も下がったしな。心配ない」
「そうかい」
まだ不満そうだったが言葉だけは納得したように返ってきた。
「テレポーテーションなどという能力が実在したとはね。まったく、零の暗号は、秘密だらけだな」
「・・・そういう名前でいわれると胡散臭さが増すな」
顔をしかめて見せると、バルトフェルドは笑った。
「化け物には似合いか」
「」
自嘲気味にいえば、怒ったように名を呼ばれた。
「君は化け物ではない」
「・・・そんなのはお前だけが思っていることだろう」
「ラクス嬢だってそうだ」
「・・・そうだな」
聞かれたらすごい勢いで怒られそうだと思い、苦笑が零れた。
「」
「気にしていない。自分の能力を使って戦争が終わるなら、利用するだけだ」
そういうと、若干不満げな表情のまま、そうか、と呟かれた。
「そろそろ切るぞ。あまり長く通信するのは得策じゃない」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ、ラクスにもよろしく伝えてくれ」
「また別のときにかけてやるといい。あの歌姫さまは、伝言じゃ不満だろうさ」
ああ、と頷いて、じゃあ、といって通信を切った。
「お茶でもいれようかな」
UP 06/11/14