「なんで嬢ちゃんまで・・・」

国の代表と会うための長い廊下を歩きながらムウは溜息交じりに呟いた。
マリューは、さあ、と小さくそれに答えた。
ナタルは睨むように、前を歩くの背を睨んでいた。



【獅子との対面】



「ストライクとフェリスのこれまでの戦闘データと、パイロットであるコーディネーターのキラ・ヤマト、及びのモルゲンレーテへの技術協力をこの国は希望している」

交換条件に応えれば、力を貸そうというウズミに、マリューは立ち上がった。

「ウズミ様、それは!」
「今すぐ返答を、とは言わない。艦内で相談してからの返答でも構わない」

だが、とウズミは続けた。それに三人が身構えた。

「その前に、さんと二人で話をさせてもらいたい」
「え?」

マリューとムウはお互いを見た後、不思議そうにを見た。ナタルは異を唱えようと口を開いたが、それよりも先にが答えた。

「私なら大丈夫です」

にっこりとマリューたちへ微笑んでみせ、困惑しつつも三人は先に部屋を出た。

「はじめまして、と言うべきかな」

ウズミの言葉には、ああ、と頷いた。

「実際に面と向かって会うのは初めてだな」

突然口調の変わったに、ウズミは目を細めた。昔と変わらないその口調の方が、聞きなれているものだった。

「あの様子だと、彼らは知らないのかな」

ああ、と再び頷いた。

「ずいぶん前から一般人ですから」

先ほどのような話し方に戻ったは笑った。

「今はそう言い難いがな」

苦笑したに、ウズミは眉間に力が入るのがわかった。昔から変わらない。重い宿命を負ったままだ。

「こんな風に呼び止めたのは悪かったかな」
「構わない。一度貴方とはきちんと会ってみたいと思っていた」

ふっとは笑った。

「何故、アークエンジェルに?」
「ヘリオポリスにいたんだ」

その一言でウズミは理解した。

「ストライクのパイロットとは、仲が良くてな。あれを一人にするわけにもいかなかった」

なるほど、との言葉に納得した。

「協力を頼むのは、悪かったかな」
「そうだな。あれは優しすぎる。できれば私一人にしてもらいたかったが」

一国の代表としてはそうもいくまい、というにウズミは、ごもっとも、と苦笑した。

「艦長たちが、交換条件に同意したら」

が振った話に、ウズミは身構えた。

「子供たちの両親を呼んでやってくれ」

そして、ハッと息を飲んだ。

「あの二人もだ」
「・・・名前を聞いて、まさかとは思っていたが」
「ああ。その通りだ」

ウズミは目を伏せた。

「奇妙な巡りあわせだな」

は、自嘲気味に笑った。
ウズミは、改めてを見た。成人とはまだ呼べない幼さを残した顔には似合わない表情だ。

「相変わらず、若いですな」
「・・・なんだ、突然」

困ったような表情を見せたに、ふと笑みをこぼした。

「娘とそんな変わらない年に見えます」

自身の身体を見降ろして、はふと笑った。

「そうだな。そんなところだろう」
「娘とはすでに?」

答えのわかりきっている問いだったが、ウズミは聞いた。は頷いた。

「なかなかお転婆に育ったな」

まったくだ、とウズミは溜息を吐きながら目を閉じた。

「よく似ている」

誰にとは言わない。

「可愛い娘だ。嫁に出したくないだろう?」

からかうようにいうに、ウズミは苦笑した。

「すまないな」

ハッと息を飲んで、目の前の少女を見た。

「貴方が謝ることなどないでしょう」
「すべての元凶だ」

忌々しそうに答えたに、ウズミは驚いた。今まで負の感情をここまで露わにしているのを見たのは初めてだった。

「今日は、ここまでにしておこう。あまり長いと、変な勘繰りをされるだろう」





UP 05/13/14