綺麗な明るい紫とも青ともいえない紅碧の髪。


『あのね、アスラン―――』


二度と会う筈の無い幼馴染とそっくりな顔。


『大好きよ、アスラン―――』


ただ、違うのは―――



【揃いすぎた共通点】



ミネルバに乗ると紅服の女に銃を向けられた。すぐに自分の正体を明かすとカガリの手当てを頼んだ。正体を明かすと言っても、俺は『アスラン・ザラ』ではなく、『アレックス・ディノ』と名乗ったが。
デュランダル議長は不思議な人物で俺とカガリをミネルバの中を案内した。その先で見た最新のテクノロジーを詰め込まれたザク等の機体。最新の兵器の話をしたデュランダル議長にカガリは大きな声をあげた。俺はそれをとめる為に、代表、とカガリを呼んだ。その後に下の階から怒鳴る声が聞こえた。

「さすがはアスハのお家芸だなッ!」
「シン!」

恨むような真っ赤な瞳でカガリを睨んだ彼を議長と一緒に案内していた金髪の少年が咎めるように呼んだ。その時、シン、と優しい声がした。カガリを睨んだ少年の腕にそっと手を添えて宥めるように彼の傍に女が寄った。心配そうな眼で彼を見つめるリバティーブルーの髪の女。
俺の隣でカガリは信じがたい光景を見るように目を見開いていた。その時、警報が鳴り出し、赤い瞳の彼がタンッと地面を蹴った。

「シン!」

彼の手を取ると何か呟き、手の甲に口付けた。その後を追うように金髪の彼が地面を蹴ろうとすると彼女は彼にも同じ事をした。心配そうな瞳で二人を見送ると彼女は俺達の方を見ず、反対の方向へ床を蹴った。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


とりあえず慌しい戦闘が終わり、一安心したと思った時にユニウスセブンが軌道から外れたという報告が入った。俺とカガリはその話を聞いた後に部屋に戻ろうと、談話室の横を通ろうとした時、中から聞こえた言葉にカガリが怒った。整備士の格好をした少年は、不可抗力だから面倒も無くていいかも、という不謹慎な言葉を告げた。怒鳴るカガリに先程会った赤い目の少年が不機嫌そうに返した。

「ヨウランだって本気で言った訳じゃない」

そんな事もわからないのか、と皮肉る彼を再び金髪の少年が咎めた。それでもカガリに対する嫌悪をの言葉を続ける彼に俺は反論した。

「くだらない理由で代表につっかかるようであれば許さないぞ」
「くだらない!?」

俺の言葉にさらに睨んだ彼は怒りを爆発させた。

「俺の家族はアスハに殺された!」

先の大戦の時にオーブに居た彼の家族は戦闘に巻き込まれ死んだ。その言葉にカガリは目を大きく見開き、ショックを隠せずにいたようだった。知ったような顔をしないで貰いたい、と言うと彼は部屋を出て行こうとした、その時。

「シン、レイ、ルナ!おかえ―――!」

嬉しそうな柔らかい声がしたが、出て行く少年の雰囲気に驚いたのか、何も言わずに彼が出て行ったことに驚いたのか、途中で止まった。

「えっ・・・シン・・・?」

その場に一瞬呆けたまま少年の後姿を見ているだけだった。そして、何があったのか問うように他の少年達振り返った。

リバティーブルーの髪。
柔らかくて気遣うような優しい声。

「あら?・・・ルナ、貴方またシンと喧嘩したの?」
「なわけないでしょ・・・ひどいよ、!」

紅服を着た短い髪の少女に問うと笑った。

「そんな・・・・・・・・・?」

唖然としたようにカガリが小さな声で呟いた。

そんな訳が無いのに。

「あら」

彼女はヤキン・ドゥーエの戦いで死んだはずなのに。

でも、目の前の少女はに他人の空似というにはあまりにも似すぎて。

のような明るい紫とも青ともいえない紅碧の髪で。

のような透き通るような美しい声で。

のようなホッとする優しい微笑みで。

でも、よりも彼女の髪は前よりもずっと短くて。

の深いアミュレットグリーンの瞳と違って薄いライトイエローの瞳で。


「失礼いたしました。ですが、私はこれで」


まるで俺達を知らないような眼差しで。


「あ、待―――!」
「それでは失礼いたします」

カガリが引きとめようとする前に彼女は部屋を出て行った。そしてカガリは俺の腕を掴んだ。

だ!あいつ、生きてたんだ!」

の出て行った後の入り口から、おい、と俺の体を揺する彼女に目を向けた。

「何やってるんだ!ほら、行くぞ!」
「え、あ・・・・・・!」

グッと俺の腕を引っ張って部屋を出た。

「ちょっ、カガリ!」
「アイツ、生きてたんだよ!アスラン!」

なのに連絡一つも入れないで、と怒りながらも喜びが顔に出てるカガリ。興奮気味の彼女にただ引っ張られるがまま俺はついていった。そんなカガリと反対に、俺は不安だった。少しして見えた後姿にカガリが叫んだ。

!!」

どうか俺の考えが間違いでありますように。







UP 05/07/05