突然頭に響いてきた声に、は顔を顰めた。
『兵隊なんかやってんじゃねーっつーの。ああ、それとも馬鹿で役立たずなナチュラルの彼氏でも死んだかあ?』
嫌な予感しかしないな、とは心の中で呟いて、走り出した。
【すべてを負うひと】
「トールが!トールがいないのに!なんで!こんなやつ!こんなやつがここにいるのよお!」
「ミリアリア!」
ミリアリアの悲痛な叫びが直にの耳に入った。サイが押さえるようにミリアリアを後ろから抱え込んだ。はちらりと左へ視線を流した。額から少し血を流している褐色の肌。ベッドに繋がれている姿から、捕虜であることは明確だった。
「ミリアリア」
が呼ぶと、ミリアリアは震えながら、ゆっくりとを見た。
「!」
サイが、なんてことを、というように呼んだ。ミリアリアが手にしていたナイフは、の手で押さえられていた。真っ赤な血に、ミリアリアは顔をさっと血の気がひいたようにを見た。
「あ、・・・ご、め・・・ごめ、ん、ごめんな、さい」
「大丈夫よ」
安心させるようにはふんわりとほほ笑んだ。しかし、がちゃり、と銃の音が聞こえ、は振り向いた。
「フレイ?」
サイが呼んだ。
ハッとからミリアリアは離れ、フレイへと飛びかかった。それと同時にはバッとディアッカのほうへ跳んだ。
「コーディネーターなんか、皆死んじゃえばいいのよ!!」
フレイが叫ぶと、銃が火を噴いた。同時に、天井のライトのガラスが割れた。ぱらぱらと降ってきたそれを背中で受け止めたを、ディアッカは驚いたように目を丸くしてみた。
スッとは、そばに落ちた銃を拾った。ミリアリアとフレイは涙を流して、起き上がった。
「なにすんのよ、なんで邪魔するの?」
自身の上から退いたミリアリアにフレイが怒鳴った。
「自分だって殺そうとしてたじゃない!あんただって憎いんでしょ?!」
フレイの言葉に、ミリアリアは震えながら首を振った。
「トールを殺したコーディネーターが!アンタだって、アタシと同じじゃない!」
「ちがう!」
否定の言葉を述べたところで、が立ちあがったフレイへ近付いた。
「な、なに」
は銃を差し出した。その行動が理解できず、フレイは戸惑ったようにを見た。
「彼を撃つなら、私を撃ちなさい」
「な、に、いって」
ハッとミリアリアとサイがを見た。
「トールも、キラも、守れなかったのは、私よ」
差し出された銃が、指先が触れ、びくりと大きく体を揺らした。
「貴方の、お父様を守れなかったのも、私」
サイは震えた。なんてことをいうのだ、と。
「憎いのでしょう?コーディネーターが」
そっと銃を握らされて、フレイは血の気がひいていくのがわかった。
「ほら、撃つのはここ。心臓を撃たれてしまえば、コーディネーターだって、死ぬわ」
力弱くフレイが首を振った。
「コーディネーターを、私を殺せば、気がすむのでしょう?」
「ち、ちがう!」
大きな声で否定したフレイに、はそっと銃を再び自身の手の中へとおさめた。
「ミリアリア、サイ」
突然呼ばれた二人は、びくりと体を揺らした。
「ごめんね」
UP 06/15/14