暴れている、危険だ。
シンが地球軍の少女を連れてきたと連絡が入って急いで私は部屋を出た。
【敵軍の少女】
周りが騒ぎ出している廊下を私は駆け出した。
「どきなさい!」
アスラン・ザラがミネルバに乗るようになって私がフェイスだと知った者達はすぐに退いた。
扉の前で艦長が驚いた様に目を見開いているのが見えた。
「退け!」
敬語も何もない。
急いでいた私は全員に怒鳴って、医務室に駆けた。
ガシャン、と色々な物が倒れて音を立てた。
「ステラ!」
「うああ!」
大丈夫だから、と叫んでピンクの地球軍の制服を着た少女を落ち着かせようとするシン。
医者と看護婦は不安そうに恐怖の色を見せて私を見た。艦長と一緒に来た軍人達が怒りと困惑を見せた。私は手で少女を殺そうと考えてそうな彼等を止めた。
「下がって!」
そう言って部屋の中に入った。
止められた一人が艦長を困ったように見たのが見えた。
「ステラ!大丈夫だから!ステラ!」
殺されそうな勢いで睨まれてもシンは悲しそうに少女を呼んだ。
シンの首に手がかかりそうになった少女を止める為に後ろから私は引っ張った。
「いやああああ・・・!」
「待って!」
シンは不安そうな顔で私に叫んだ。
「離せッ!いやああ!」
「ッ・・・!」
暴れる彼女の爪が私の腕に食い込んだ。
「落ち着きなさい!」
「いやああああッ!」
泣き狂う彼女が私の正面を向いた。
恐怖で溢れる彼女の目を見た私は、まるで引き込まれるかのように少女を抱きしめた。
「ステラ!」
シンが呼んでいた名前だからではなく、自然に彼女の名前が口から出てきて驚いた。
「う、は、離せええ・・・ッ!」
「大丈夫よ!ステラ!私は貴方の味方なの!」
ギュッと抱きしめた直後、一瞬体が離れて彼女の目が私を映した。
「あ、ああ・・・」
「大丈夫、ステラ。大好きよ」
一瞬抵抗が止まった彼女の目を見て、微笑んで見せた。
すると、彼女は真っ青な顔で、私に倒れこんだ。
「大丈夫。大丈夫だから」
「だい、じょうぶ・・・?」
不安そうな声で訊く少女に頷いた。
「大丈夫。大好きよ、ステラ」
「好き・・・?」
また小さな声で訊いた少女に頷いて頭を撫でた。
「大好きよ、ステラ」
ホッとしたように息を吐いて、ステラの目はゆっくりと閉じた。
「、大好き・・・」
微かに聞こえた言葉に一瞬耳を疑った。
どうして、彼女が私の名前を知っているのだろうか。
安心したように私に抱きついたまま静かに寝た少女の頬をそっと撫でた。
UP 03/05/06