【The Tiger of the Desert】
カガリがキラのケバブにチリソースを掛けようとした時、怪しい男が近づいてきた。
「何を言う。ケバブにはヨーグルトソースだろう」
カガリはムッとして男とどちらの方がいいか言い合いを始めた。私はその怪しい男に一瞬目を見開く。
アンドリュー・バルトフェルド・・・・・・!
一瞬目が合った『砂漠の虎』はカガリと未だにケバブについて言い合っている。幸い、『砂漠の虎』を目の敵にするカガリは、彼の正体に気付いていないらしい。間に挟まったキラは困ったような顔をして、私は苦笑をした。
ケバブに掛けるソースの事でそんなに言い合う必要があるのかどうか・・・
「まあ、どちらも美味しそうですよ」
そう言う問題じゃないと、私の言葉に二人が声をそろえた。思わず二人の行動に呆れた顔になる。特に大の大人がこんな小さなことで言い合う事がくだらないと思ってしまう。
「「あっ!」」
言い合った末、二人が同時にキラのケバブにそれぞれのソースを掛け、ミックスという形で終わった。
「凄い荷物だね。パーティーかなんかでもやるのかい?」
フレイに頼まれた荷物を指して笑うと、カガリはムッとしたまま、何故其処に座っているのか問う。しかし、カガリの言葉は最後まで続けられなかった。突然感じた感覚にビクリと一瞬体が震えた。
「死ね!宇宙の化け物め!」
怒鳴る声と共に私は、伏せて、と叫ぶと同時にテーブルを蹴り上げる。すると銃声が響き始める。コーディネーターを嫌悪するプルーコスモスに先程から隠れていたザフト兵達が応戦する。
なるほど。これが隠れてた理由ね。
先程から何故ザフトの領域を兵士達がわざわざ隠れているのか不思議に思った。噂どおりブルーコスモス達に困っている為だったらしい。路地の陰から狙っている男に気付いてすぐに反応する。カガリをキラに任せて、男の腕を蹴り上げて銃を手から離させる。撃つのは面倒だと思い、左足を体を回転させながら振り上げ、廻し蹴りを首に決める。気絶した男の銃を拾いあげ、少し離れた位置にいた男の手を狙って撃つ。銃を落としたその男は他のザフト兵に撃たれた。私はとりあえずカガリとキラの近くを狙う人間の手を次々と撃っていった。怯んだ彼等をザフト兵が撃っていくのがわかった。
「隊長!ご無事ですか!?」
銃撃戦が終わると若い男が近づいてきた。サングラスを外しながら、彼等のおかげでね、と答えた彼にカガリが目を丸くした。
「アンドリュー・バルトフェルド!砂漠の虎!」
睨む彼女に彼は苦笑を浮かべた。
「彼女をそのまま帰すわけには行かないだろう。案内しよう」
「なっ・・・!」
何故行かなければならない、と怒鳴りそうなカガリは、ケバブのソースまみれ。私が蹴り上げたテーブルの上にあったソースがかかってしまったらしい。彼女が怒鳴る前に私が答えた。
「そうですか?それでは、お願いします」
「!?」
目を丸くして私を見る彼女に微笑む。
「貴方だっていつまでもそんな格好では居たくないでしょう?」
「だが・・・」
ほら行きましょう、と彼女の背に手を添えて促す。キラを見ると困ったように眉を下げて私を見ていた。キラも、と安心させるように微笑む。
『砂漠の虎』はこういう時は紳士だから、大丈夫。その言葉を口にはしないでザフトのジープに乗り込んだ。
UP 08/26/05