何故、俺をそんな眼で見るんだ?
―――そんな不思議そうな眼で。
頼む、俺をそんな眼で見ないでくれ。
―――そんな他人を見るような眼で。
【忘れた瞳】
呼び止めたカガリは怒っているのに、嬉しそうな顔だった。
「!」
振り返った顔は、まさにそのものだった。
さっき見た時と同じで。
「生きていたんだな!!」
少し驚いたように目を見開いたは、何も言わなかった。
嬉しさのあまり抱きつくカガリを戸惑ったように見ると俺に目を向けた。
「生きてて良かった・・・!」
が、生きていた・・・
「心配しただろうッ!」
怒りつつ喜びの声をあげるカガリを他所に、俺は、目の前の状況についていけなかった。
違う・・・・・・
「何で連絡しなかったんだよッ・・・!?」
彼女の俺を見る眼は、他人を見る眼だ。
知らない人間を、見る眼だ。
「どうしたんだよ、?」
何も言わないを不思議そうにカガリが見上げた。
「・・・?」
何度も呼ぶカガリを見るのは、美しいグリーンの瞳じゃなくて、淡いライトイエローの瞳。
「カガリ・・・」
そんな彼女の眼に耐えられず、カガリを呼んだ。
けれど、カガリはその事に気付かず、俺に話し掛ける。
「何だよ、アスラン。お前ももう少し嬉しそうにしろよ!が生きてたんだぞ?」
違うんだ、カガリ。
彼女は、だけど、じゃない・・・
「アスハ代表・・・誰かと勘違いをなさっていませんか?」
「はっ・・・?」
相変わらず落ち着いた声は穏やかにカガリに問い掛けた。
その他人行儀な言葉遣いにカガリは、何を言っているんだ、と言いた気にを見る。
「私の名は確かに、ですが・・・私は貴方のような一国の代表と名前で呼ぶ程の親しい関係になれた記憶は無いのですが。」
ぎこちない微笑みを浮かべる。
「何を、言って―――」
やめてくれ・・・
「カガリ」
今まであんなに望んでいたのに。
「もう、やめよう・・・」
彼女との再会を望んでいたのに。
「何で!?」
再び共に笑いあう事を望んだのに。
「彼女は、俺達を知らない・・・」
彼女は俺達を忘れてしまった。
「何言ってるんだ、アスラン!」
信じられない、とカガリはの肩を掴んだ。
「!ふざけるのもいい加減にしろ!私がわからないのか!?」
不安を隠せないカガリの瞳を見ては目を伏せて告げた。
「私は・・・・・・貴方を『オーブの若き代表』としか存じません」
その言葉を聞いたカガリはの腕を掴んだまま俯き、叫んだ。
何故―――
「どうしてッ・・・!?なんで、そんな事を言うんだッ・・・!」
君が死んでしまったという事実を受け入れられなかったのに―――
「わたしたちはッ・・・!わたしはッ・・・!」
時間が逆に進んで、君とまた笑う事を望んだのに―――
「おまえが・・・死んだと、思ってたのにッ・・・・・・!」
君が居れば悲しみなんて無いと思ったのに―――
「おまえがッ・・・生きていてくれてた、ことをッ・・・・・・!」
君が生きていて嬉しいと心の底から思うのに―――
「こんなに・・・!こんなに、嬉しいと思うのにッ・・・・・・!?」
―――何故こんなにも悲しいんだろう。
UP 05/07/05