とても幸せそうな微笑みに、安堵すると同時に寂しさを感じた。
サクラサクサクラノセイ
肆
四番隊の卯ノ花隊長から受け取った薬を届けに雨乾堂へは足を向けた。すると大きな争う声が二人分聞こえ、は足を速めた。まさか、と進んだ先には、仙太郎と清音がいつも通り言い争っている。その事には慌てて駆け寄った。
「何しているの!」
「「!」」
今日は浮竹が風邪をひいてしまい、仙太郎と清音はどちらが看病するか、ということで争っていた。しかし、はいつもの穏やかさを消し、キッと二人を睨む。
「病人のそばで騒がないの!」
う、と二人が言葉に詰まると、それぞれに仕事を与える。
「貴方達が仕事放ってここにきたら、さぞ、貴方達の大好きな隊長は落胆されるでしょうねぇ・・・」
「「う゛・・・」」
「それに、ゆっくりと静かにしていられなかったら、病状も悪化してしまうかもしれないわね。」
「「いってきます!!」」
青ざめて二人が駆け出すと、はやれやれとため息を吐いた。そして、失礼します、と襖に手を掛けた。部屋の中では、浮竹が布団の中で横になっていた。げほ、と咳をして、を見た。
「おはようございます、隊長」
「ああ・・・」
するとはそのまま布団の隣へ腰を下ろした。
「わるいなぁ、」
申し訳なさそうに謝る浮竹の顔は、熱のせいで赤い。は、気にしないでください、と微笑んで額の上からぬるくなってしまった手拭いを取った。
「隊長の看病をしながらでも、仕事できますから」
「助かるよ」
ごほ、と咳をして、はあ、と普段よりも熱いため息を吐いた。
「でも、意外だったな・・・」
「何がです?」
氷水にその手拭いをつけて、は浮竹を見た。
「お前が結婚するなんてさ」
ごほっ、と咳をする浮竹に、は苦笑する。からん、と氷が音を立てた。
「そんなに意外ですか?」
きゅっと手拭いを絞るとそれを額に乗せた。
「私、そんなにお嫁さんに向きませんかね」
困ったようなの顔を見て、浮竹は慌てて、ちがうんだ、と起き上がった。
「お前が嫁なら、幸せだと思うぞ!面倒見もいいし!優しいし!飯もうまいし!」
勢いよく言われた言葉には顔が熱くなるのを感じたが、浮竹はそれに気づかずに続けた。
「だけど、そうじゃなくてな。その、なんていうかなぁ・・・」
ごほごほ、と咳をすると、が苦笑しながらその肩を押して寝かせた。
「隊長、私も一応貴族ですから、いつかはお嫁に行ってたと思いますけど?」
「そう、なんだけどな・・・なんていうか、想像していなかったんだよ」
は落ちた手拭いを再び額の上へ乗せる。そして、熱い頬に触れると、冷たい手が気持ちいいのか目を閉じた。まるで嫁を送り出す父親ような言葉には苦笑する。
「それも、白哉だなんてなぁ・・・」
その呟きには困ったように笑う。
「正直、私も予想してませんでしたけどね」
苦笑するに浮竹は、でも白哉名なら安心だな、と呟いた。
「白哉は、いい奴だぞ」
浮竹の言葉には一瞬驚いたように目を大きく開いたが、すぐに笑った。
「そうですね。とても、優しい方でした」
その言葉に浮竹は、安心したように笑って再び目を閉じた。そして、浮竹の寝息が聞こえると、は布団の横からそばにある机の前に移動し、書類を書き始めた。
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UP 05/12/14