【チェス】



「はい、チェックメイト」
「あ〜!もう一回!ね、。あと、もう一回だけ!」

悔しそうにキラが人差し指を立てて次のゲームをねだる。
ボードの反対側に座るは苦笑いを浮かべて、うーん、と唸った。

「キラ、俺にも勝てないのにには勝てないと思うんだが・・・」
「そういえばキラってアスランにチェスで勝った事ってなかったっけ?」
「なっ!そんな事ない!アスランに勝った事だってあるよ!」

俺の言葉にそういえば、というにキラはムッとして、声をあげた。
俺はにチェスで勝った事がない。いつもどんなに考えていてもが一枚も二枚も上手だ。
キラも下手じゃないけど、俺やには勝てない。

「勝った事、あったっけ・・・?」
「あったか?」
「っ・・・!一回だけだけど、ある!」

一回だけって・・・
思わず呆れた眼でキラを見ると、も一瞬呆れた眼をすると苦笑いを浮かべた。

「まあまあ、キラ。キラは優しくて素直だからね。チェスなんて捻くれてる人ほど勝てるんだから。」

の言葉に今度は俺が少しムッとした。

、それって俺がひねくれてるって事か?」
「えっ、あ、別にそう言う意味じゃ・・・」

慌ててフォローしようとするにキラが笑った。

「アスランの場合はあってるかもしんない!」
「キ、キラ!」

笑うキラを睨んだ。

負けてる奴に笑われたくない・・・
大体チェスは頭脳ゲームじゃないか。

「キラが単純だから弱いだけだろ」
「なっ!今の聞いた、?!」

アスランがひどい、とドサクサにまぎれてにキラが抱きついた。
母親に甘える子供のようにに腕を巻きつけるキラ。
は笑いを耐えようとして苦笑いを浮かべていた。

「ま、まあ、アスラン。今のはちょっと言い過ぎじゃない?」
!笑いながら言ってもフォローになんないよ!」

頬を膨らませてキラが言うと、ごめん、と笑い出した。
確かにあんなにあからさまに笑ってるのがわかるとフォローになってないとも思う。

すると突然電話が鳴った。やんわりとキラの腕を解いてが立ち上がって電話に出る。

「何で、にチェスで勝てないんだろ?」
が頭がいいからだろ」
「でも僕やアスランだってと同い年なのにさ。はお母さん達にも勝てるんだよ?」

チェスボードを直しながらキラがぼやく。
確かにはとても頭がよくて学校でも一番ばかり取っている。
母さん達との難しい話にも平気で入ってる時もある。

「キラ」

電話で話し終わったがキラを呆れたような顔で見た。

「今日、早く帰るように言われてたんだって?」
「え、あ!そうだった!」

慌てて立ち上がったキラが色々荷物をまとめ始めた。

「お母さん怒ってた?」
「早く帰らないと大変な事になるかもしれないくらい。」
「え〜!」

クスクスと笑うの顔を見ればからかってるのは一目瞭然だ。
でもキラは更に急いで荷物を詰めるとバタバタ出て行った。

「またね!!アスラン!」
「ちゃんと宿題おわらせなさいよー?」

最後の釘をさしてはバタンと音を立ててしまったドアを見て笑った。

「まったく、キラは忘れっぽいね」

フフッと笑ったを見ると手に色々書いてある紙。

「アイツ・・・」
「折角やったのに忘れちゃって。明日学校始まる前に届けないとね」

二人でやれやれと笑った。
キラの物をテーブルに置くと俺の隣に座って笑った。

「こんな風に忘れ物してる間は、勝てないだろうね」
「忘れ物しないのに俺は負けるけどな」
「私のが捻くれてるからね」

何だよそれ、と呆れた顔を見せると、クスクスと笑る
が捻くれてるって言ったら世の中どうなんだ。
思わず突っ込みたくなるが、ふ、と笑ってに問うた。

「もう一回くらいチェスをやる気は?」

俺の問いにクスリと笑みを零すとは頷いた。

「もう一回くらいならいいかな」

チェスの駒を全部直しながら俺は今までのとのゲームを思い返していて意気込んだ。


今日こそ君に勝ってみせる。





UP 04/08/05