それは、まるで、桜の精に出会ったかのように。



さくらさくさくらのせい
                                       





突然聞こえた声に、は息を飲んだ。大きく見開いた目に映るのは、まだ包帯の取れていない白哉だった。

「な、ぜ」

白哉は、ルキア達に聞いた、と短く答えた。黙っていて欲しいといったのは聞き届けられなかったのか。は目を伏せた。

「申し訳ありません・・・」
「それは何に対しての謝罪だ?」

冷たい声がすぐ傍で聞こえ、は震えた。

「白哉さまの命に従わず、ルキアを救うために動いたのに、なにもできず、逆にやられてしまう始末で」

ひやりとした手が頬に触れ、は途中で黙った。手に促されるまま上を向くと、怒りを含んだ目とあった。

「何故、卯ノ花にまで口止めした?」
「・・・このような、怪我を、朽木の嫁が負うなど、恥と」

睨みつけるように見る相手に、は再び途中で言葉を飲んだ。一体何に怒っているのだろうか。にはわからなかった。

「怪我をしたと聞いて、心配した」

意外そうに大きく見開いた。

「誤解があるようだ」

元々おしゃべりではない白哉は、どう説明するか考えていた。

「ルキアに姉を与えるために、嫁を取ったわけではない」

は意味がわからない、というように白哉を見た。

「ある日、隊舎から帰る途中、桜の木に寄りかかっている者を見つけた」

突然始まった語りに、は耳を傾けた。

「それがとても美しかった」

まるで絵画のように。

「時が止まったように感じた」

それが一体何の関係があるのか、とは首を傾げた。

「それからしばらくその者を見ることはなかった。死覇装を着ていたが、何番隊なのかもわからなかった」

やっと見つけたとき、と白哉がいうと、は息を飲んだ。

「その者は現世から傷を負って帰ってきたところだった」

ルキアを優しく抱きしめていたのだ、と告げた。

「その時、という名を知った。浮竹の傍に、時折いる姿を見るようになった。いつも笑みを絶やさずに」

ふっと白哉は笑った。

「隊首会に迎えに来ていても、その目は浮竹しか見ていなかった。そして、その目に私を映したいと思うようになった」

親指がそっと頬を撫でるように動いた。

「だから、家が見合いを考えていると聞いたとき、名乗り出た」

うそ、と小さくの口が動いた。音も出ていなかったそれを理解した白哉は、苦笑した。

「知らなかったとは、思っていなかった」

それが本当ならば通りですぐに婚約が決まったわけだ、とは振り返った。

「黒崎一護が怒鳴りこんできた」
「え!」

不機嫌そうに白哉が顔を顰めた。

「自分をルキアの姉の身代わりだと思っている、と。もっと大事にしてやれ、と」

内緒っていったのに、とは自身の頭から血の気が引くような感覚を覚えた。

「緋真の代わりだと思ったことは、一度とてない」

きっぱりと告げられた言葉に、衝撃を受けた。

「わ、たし・・・」

言葉に詰まった。



「愛している」




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UP 06/01/14