スレチガイ アンノウン

10. 少年少女のアンノウン



!」
「あ、亮君。」

は頷くと立ち上がった。

、忍足もうすぐ来るぞ。」
「あっそう?意外と練習おわんの早いね。」

座ったままのを見下ろしながら宍戸が言うとは、へぇ、と感心したように呟いた。

「じゃあ、帰るか。」
「うん。」

嬉しそうに笑顔になったに宍戸は微笑んだ。

「なーんかイイ感じになってんじゃん?」
ちゃん!」

がからかうように笑うとは顔を赤くした。
宍戸はふんと鼻を鳴らして誤魔化すように顔を背けた。
行くぞ、との手を引こうとした瞬間、の隣から少し楽しそうな声が話し掛ける。

「なあ、宍戸。」
「んだよ、月空?」

少しムッとした顔で振り返るとの隣に座って居た紅夕は笑みを浮かべていた。
宍戸は紅夕の笑顔が、馬鹿にしているようで気に入らない、と言ってあまり好いていなかった。
その為、は二人のやり取りを少しハラハラして見ていた。

「今度の日曜、借りるぞ。」
「ああ?何でだよ?」

片方の眉だけあげ訝しげに紅夕を見た。
紅夕は余裕を持っているようなの笑みでニヤリと笑った。

「俺の誕生日なんだ。」

その言葉にムッとした宍戸はそのままの手を引いていった。
少し慌てた様子のとドンドンを引っ張って歩く宍戸の後姿を紅夕は笑った。

「ははは、わかりやすいな。」
「本当に・・・ありえないくらいわかりやすいね。」

呆れたようには同意すると、まあ良かったのかな、と微笑んだ。

「でもさ、アンタはあれでよかったわけ?」

の問いにも紅夕は笑みを浮かべたまま、んー?とぼけるような声を出した。

「まあ、アイツが幸せならいいんじゃないか?」

クッサイ台詞ね、とは笑うと、だよな、と紅夕は苦笑した。

「あの子も鈍いもんねぇ。」
「其処がいいんじゃないか。」
「なるほど。やっぱりそうよね。」

私もそう思うわ、ともう見えなくなった後ろ姿を見ながらは笑った。

「私達って結構趣味あってるのかもね。」
「そーか?俺は忍足だけは勘弁してもらいたいけどな。」

紅夕が笑うと後ろから、何の話や、となまった問いかけ。

「あ、忍足。本当に早かったね。」
「そら〜ん事必要以上に待たせられんやろ。」
「まあ、紅夕がいたから退屈はしなかったけど。」

やあ忍足君、と手を振った紅夕に忍足は、おう、と笑った。

「せや、今日時間あるか?」
「ない事もないけど。何で?」

が問うと忍足は彼女の質問には答えず紅夕にも同じ質問をした。
それに紅夕は、あるけど、と不思議そうな顔で答えた。

「ほなら、たまには三人でどっか行くか。」
「は?」
「いや、邪魔者は面倒だからいいよ、俺はね。」

苦笑して答える紅夕に忍足は笑った。

「月空が居らんと意味ないんや。」
「だから、何でよ?」

が不思議そうな顔で訊く。

「まず『ちゃんと宍戸の上手く行ってよかった記念』やろ。」
「はあ?」

本人が居なくてどうすんのよ、と突っ込むに忍足は続けた。

「二つ目は、『月空紅夕君をなぐさめたろうの会』や。」

そんな忍足の言葉に紅夕は苦笑した。

「俺はそんなショック受けてないけどな。」
「何言うてんねん。『最近紅夕が元気ないの』ってちゃん心配しとったで。」

声を高くして真似する忍足に紅夕は苦笑した。
そしては、仕方ない、と笑って紅夕の肩を叩いた。

「まあ何はともあれ、アンタの言う通り、も宍戸も幸せになれたんだから、良かったんじゃない?」
「そうだな。」

優しい笑みを浮かべた三人の頭の中には、すれ違ってしまった前よりも幸せそうに笑うと宍戸の笑顔が浮かんだ。



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