スレチガイ アンノウン
06. 少年の嫉妬
「宍戸ー。」
「んだよ、向日。」
テニス部に向かうと向日に呼ばれた。
「お前、こんなところで何してんだよ!」
「は?」
突然怒鳴られて間抜けな声をあげた。
「あれぇ〜?何で宍戸居んの〜?」
珍しく起きてる慈郎にまで首を傾げられた。
「何がいいたいんだ、お前ら。」
ぶっきらぼうに言うとぞろぞろと後から増えてくる元三年レギュラー達。
「可哀想やなぁ、亮ちゃん。」
「テメェ、忍足・・・ふざけてんじゃねぇよ。」
「んだよ、宍戸。お前振られたのか?あーん?」
「ああ?んだと!?」
思いっきり睨むと跡部は人を馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「んじゃーさ!今日は皆でどっかパーッと遊びに行こうぜ!宍戸の誕生日祝いに!」
「岳人は、ただ遊びたいだけだろ。」
「い、いいじゃん、滝。気にすんな!」
「仕方ねーな。付き合ってやるよ。」
「素直やないな、景ちゃん。」
「黙れ、忍足。」
わあわあ、ぎゃあぎゃあ、騒ぎ出すメンバーに俺は溜息を吐いた。
そして、向日と慈郎に引っ張られて結局出掛ける事になった。
「まぁ、ええんやない?一人で居るよりは。」
楽しそうに笑う向日と慈郎が前を歩いていると忍足が俺の横を歩いていた。
「るせーよ。」
「そないに不機嫌にならんでもええやん。折角跡部が奢ってくれる言うてるのに。」
「ああ?いつ誰がそんな事言ったんだよ?」
「跡部。」
忍足の隣で跡部が、言ってねーよ、と眉間に皺を寄せていった。
「まあ、ホンマはちゃんがええんやろけど。」
呟いて苦笑する忍足に俺は何も言わなかった。
コレがこいつ等なりの優しさだ。
イライラとしていたのがさっきより大分良くなった気がした。
・・・向日の言葉を聞くまでは。
「あれ、宍戸の彼女じゃねー?」
向日が指した先には校門の所で立っている。
まるで誰かを待っているようだ。
「なんだ、宍戸。よかったじゃん。ちゃん、待っててくれたみたいだよ?」
滝がニッコリ笑って言った。
そんなはずは無い。
俺は、に待たなくていいって言ったんだ。
アイツは、わかった、と言ったらやる奴だ。
「よかったじゃねーか。宍戸。」
跡部が笑ったが、俺は何も言わずただ、を見ていた。
「宍戸?」
ただ、じっとを見た。
そして、なにやってんだよ、と向日が言ってに声を掛けようとした。
「お―――」
「!」
向日の声を遮って聞こえた声は、俺でも、テニス部の奴のでもなかった。
が顔を上げて、声のする方を見て、微笑んだ。
「紅夕。」
「本当悪かった。あの人、なかなか返してくれなかったんだ。」
「気にしなくていいって。紅夕のせいじゃないし。」
まるで、本当の恋人のように交わされる会話。
『紅夕』
忍足が言っていた奴だ。
「あれ、まさか・・・」
忍足が俺の隣で驚いた様に呟いた。
俺は、立ち止まった足を動かした。
恋人のように楽しそうに笑うと男の近くに少しずつ近づく。
「し、宍戸?」
「おい・・・!」
止めようとするメンバーを無視しての方へ歩く。
ようやく俺に気付いたは目を大きく丸くした。
「おい。」
振向いた男は、目を見開いて俺を見た。
「宍戸・・・」
「りょ、亮君・・・?」
俺の名前を呟く男の隣でが少しどもりながら俺を呼んだ。
「あ、あの、亮君・・・今日、テニス部に出るって・・・」
「ああ。だから?」
冷たく言うと忍足と跡部が少し早足で俺の斜め後ろにたった。
忍足は少し焦ったように、どうしようか考えてるのがわかった。
「誰だよ。ソイツ。」
男に目を向けて言った。
「あ、紅夕と会った事無かった?」
「そうだな。こうやって会うのは初めてだな、。」
、と呼び捨てにする男に嫉妬している自分が居た。
紅夕、と呼び捨てにするに腹が立った。
俺の事は、亮君、と呼ぶのに。
「月空紅夕君・・・小さい頃から一緒の幼馴染なの。紅夕、宍戸亮君。」
「初めまして、月空です。」
「どーも。」
月空と言った男は忍足を見て笑った。
「初めまして、忍足君。」
「俺の事知っとるんか?」
「君の彼女とが親友だからね。話はよく聞くんだ。」
忍足から俺に視線を移した。
「もちろん、君のこともね。宍戸君。」
「。」
ソイツを無視して俺はに目を向けた。
「亮君、今週は忙しいからって言ったから。紅夕に送ってもらってて。」
「で、浮気か。」
「っ!」
驚いたように俺を見たを俺は睨んだ。
でも、その隣に居た月空が声をあげた。
「んだと!お前、の事が信用できないのか!?」
「紅夕!」
「テメエには関係ねぇだろ!」
俺を強く睨む月空に俺も声を荒げた。
「ふざけんなよ!」
「宍戸!」
「亮君!」
ドカッと月空に殴られた俺は睨み返した。
「んで、関係ねぇテメエに殴られなきゃなんねーんだよ!」
「ざけんな!お前、が今までどれだけ我慢してきたと―――!?」
「やめて、紅夕!」
立ち上がった俺をもう一度殴ろうとした月空の腕をが掴んだ。
「やめて、よ・・・」
泣きそうな声。
でも、月空と俺を見るの眼に涙は無かった。
そして、本当に申し訳なさそうな顔をして俺を見た。
「やめて、紅夕・・・亮君は、悪くないんだから。」
「!」
「ゴメンね、亮君・・・紅夕とはただの幼馴染だし。最近、放課後送ってくれただけだから。」
月空が止めようとするがの言葉は止まらなかった。
「ごめん、紅夕。今日、やっぱり一人で帰るから。」
「!」
くるっと背を向けて走り出したを止めようと月空の声がした。
俺はただの後姿を見るだけだった。
「おい、宍戸。追いかけなくていいのか?」
「せや、宍戸。今行かな、ちゃん待っとるはずや。」
「宍戸!彼女追いかけろよ!」
落ち着いた跡部と忍足の横で向日が大声で叫んだ。
俺が視線を地面に移すとガッと胸倉を掴まれた。
「おい、宍戸。お前、今追いかけなくてどうすんだ!?」
「テメエには―――」
「はな、お前が好きなんだよ!嫌われたくなくて、ワガママが言えなくて!」
俺は、さっきとは違う月空の眼に驚いた。
「放課後だって遅くても言いから待ちたいのに、待てなくて!好きだって言葉も貰えなくて、不安で!」
ギュッと握っていた腕の力が弱くなって、月空は切なそうな声で俯いた。
「にどれだけ寂しい不安な思いをさせれば気が済むんだよ・・・」
その言葉に俺は走り出した。
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